巨人阿部慎之助内野手(38)が、開幕弾で17年シーズンの号砲を鳴らした。中日1回戦(東京ドーム)の1回2死二塁、大野から右翼席へ先制の1号2ランを放った。12球団で今季最初の1発は、自身初の開幕戦アーチ。3回にも2死一、二塁から中前適時打で追加点をたたき出した。生え抜きでは球団史上5人目となる2000安打まで83本と迫っていた主砲が、1本塁打1安打で幸先よく2本を積み上げた。オープン戦最下位のチームがV奪還に向けて快調に滑り出した。

 最速で最高のスタートを切った。試合開始から17分が経過した午後6時20分。阿部が、右手一本でスタンドまで運んだ。1回2死二塁。中日大野が投じた外角に沈む132キロフォークを白木のバットに乗せた。上体を崩されながらも下半身で粘った。「少し体勢は崩されたけど、バットの芯で捉えられたし、角度も良かった。いいスタートを切れたけどこれからです」。鍛錬してきたバットコントロールで今季プロ野球1号となる先制2ランを決めた。

 開幕戦の第1打席から「ABEメーター」を動かした。技ありの1発で2000安打まで残り82本、続く3回の2打席目で中前適時打で残り81本とした。個人記録には興味を示さない阿部に大台を意識させたのは意外な人物だった。

 阿部 一塁ベース上で井端さんに言われたのが最初かな。「俺に並んだな」って言われて。井端さんの安打数と照らし合わせた時に初めて2000という数字がイメージできた。

 昨季の9月22日中日戦で井端コーチに並ぶ1912安打目から心の中だけでカウントダウンが始まっていた。17年、大台への第1歩は自身初の開幕弾。背番号82の井端コーチが見張る一塁ベースをさっそうと駆け抜けると、思わず笑みがこぼれた。「去年のことを考えれば、今日ここに立てているだけでも幸せに感じる。体調もいい。オフからやりたいことは全部できた」。昨季は右肩痛で開幕2軍を強いられた主砲が、1年前の鬱憤(うっぷん)を快音で晴らした。

 1月2日。東京ドームの一塁側ベンチ裏のトレーニング場で始動した。右肩のインナーを鍛えるために地道な動作を繰り返した。体を温めてから打撃ケージで黙々と打ち込んだ。「去年はダメだったんだから練習をするしかない。解決方法はそれしかないでしょ。今年なんとかという思いはある」と、2000安打よりも“逆襲”を強く意識している。オープン戦最下位に沈んだチームにも開幕白星をもたらした。プロ17年目。阿部が力強く動きだした。【為田聡史】

 ▼4番阿部がプロ入り初の開幕戦アーチ。阿部の本塁打はこれが通算374本目。通算486本の大杉(ヤクルト)通算404本の中村紀(DeNA)が開幕戦本塁打を記録せずに引退したが、通算374本目で初の開幕戦アーチは同じく今年初めての新井(広島)307本目を上回り、最も難産だった。また、巨人4番打者の開幕戦アーチは09年ラミレス以来で、日本人選手では00年松井以来、17年ぶり。