最高で~す!! 巨人阿部慎之助内野手(38)が劇的サヨナラ弾を決めた。中日2回戦(東京ドーム)の9回2死一、二塁、中日田島から左翼席へ2号3ランを放り込んだ。前夜の開幕戦に続く2戦連発弾。自身7本目のサヨナラ弾は、プロ野球史上6位タイで球団では長嶋茂雄終身名誉監督に並ぶ2位に浮上した。4回にチーム初安打を放ち、2000安打まで残り79本とした。4番の一振りでチームは開幕2連勝を飾った。

 38歳のベテランが無邪気にはしゃいだ。1点を追う土壇場の9回。阿部が意気揚々と打席に入った。カウント1-1からの3球目。田島の外角に沈むフォークを無心で振り抜いた。「(村田)修一がすごい執念でヒットで塁に出た。絶対にチャンスで回ってくると信じていた。あとは、覚えていません」。バットを目いっぱい伸ばして拾い上げ、左翼席にぶち込んだ。爆発的な大歓声に右拳を突き上げて呼応。本塁で待ち受けるナインの輪に興奮そのままに飛び込んだ。

 前夜の開幕戦に続く2戦連発弾。やっぱり役者が違う。心も体も充実していれば偶然の巡り合わせさえも、全てがプラスに働く。開幕弾の夜、向かった飲食店でDeNA筒香と遭遇した。WBCで侍ジャパンの4番を張った若き主砲をねぎらうと同時に、シーズンでの“ガチンコ勝負”を誓い合った。「筒香はすごかった。自分たちの日本球界のために頑張ってくれた。この盛り上がりをシーズンにもつなげないと。ここからは敵同士として、いい勝負をしたい」。力を認め合う左の長距離砲同士の世界観を活力にした。

 ベテランの同志の意地も共有した。開幕戦からスタメンを外れている村田の存在を忘れなかった。9回1死から代打安打でお膳立てをしてもらった。「あの姿を見て奮い立った。相手の抑えから代打でヒットを打つのは難しい。俺の本塁打よりもそっちの方が価値がある。今日は修一のおかげで勝てた」と、ともに戦う仲間への敬意を優先した。

 お立ち台では「最高でーす!!」の決めセリフをとどろかせた。ファンと一体となって進むペナントレース。先はまだまだ長い。高橋監督は「選手の力で勝っていい試合だった。なんとか阿部まで回せばチャンスがあるかなと。それに応えた阿部は、さすがです」とたたえた。「結果だけ見れば出来すぎ。また勝利の1本を打てるように日々新たに集中してやっていきたい」と阿部。球界のど真ん中に阿部が帰ってきた。【為田聡史】

 ▼阿部が逆転サヨナラ3ランを放った。阿部のサヨナラ本塁打は12年8月19日広島戦以来7本目で、サヨナラ安打は13年3月31日広島戦以来13本目(他にサヨナラ犠飛とサヨナラ四球が1度)。「逆転サヨナラ」は02年9月17日横浜戦に次いで2度目だが、前回は1点差の9回2死満塁からの2点適時安打。逆転サヨナラ本塁打はプロ入り初めてになる。通算7本目のサヨナラ本塁打は長嶋(巨人)らに並び6位タイ、通算13本目のサヨナラ安打は立浪(中日)に並び7位タイ。セ・リーグでは本塁打、安打ともに3位タイに進出した。阿部は開幕戦の先制本塁打もV打。巨人で開幕1、2戦連続本塁打は16年長野以来13人、16度目だが、開幕1、2戦連続V打は2リーグ制後の巨人では初めてだ。