広島九里亜蓮投手(25)が、6回まで毎回走者を背負いながら1失点にしのぐ粘投で、開幕カード勝ち越しを導いた。外角球を見せながら、内角を強気に攻める投球で要所を締めた。前日まで先発投手が責任投球回を投げきれない試合が続いていた中での奮投。「ポスト黒田」を期待する緒方監督も最大級の賛辞でたたえた。

 マウンド上の九里は、最後まで攻め続けた。3点リードの5回1死二塁。この日の生命線となった内角球が阪神糸井の右腕を直撃。一度ベンチに引き揚げた糸井がしばらくしてグラウンドに戻った。一、二塁となり、間が空いて迎えた4番福留にも臆さず胸元、膝元を突いた。結果は四球。打席のベテランがにらむようにマウンド上を見るも、逃げなかった。

 「糸井さんには申し訳ないですけど、そこで逃げの投球になってもダメ。攻めの姿勢を貫いた投球を心掛けた」。

 1死満塁で原口。追い込んでから外角球のサインに首を振り、内角シュートを要求した。右打者に効果絶大だったシュートで懐をえぐり、三塁線へのゴロで併殺に仕留めた。

 強気な投球の裏には、入念な準備による裏付けがある。「打者の反応を見ながら駆け引きしている」と投球が身上。今年になり、事前ミーティングに時間をかけるようになった。相手の調子や得意不得意をメモする。スコアラーへの質問や要求も増えた。その姿勢は昨季限りで現役を引退した黒田氏の影響もある。昨季最多勝の野村ら、好投手の取り組みを情報収集するなど積極的に取り入れる。この日の試合前も、黒田氏やジョンソンと同じように、選手や首脳陣、スタッフとグータッチしてマウンドに向かった。

 6回まで毎回走者を背負い、球数は115球要した。それでも失点は、糸井のソロによる1点のみ。3年がかりで奪い返した開幕ローテーの座で「試合を作ることを意識した」と役割を全うした。緒方監督は試合後自ら切り出すように九里を絶賛。「すごく成長している。シュートは大きな武器になっている。緩急も使えることができるようになり自信になっている。ピンチを乗り越えればまた自信になる。この投球を続けていって欲しい」。連勝をもたらすとともに、「ポスト黒田」の筆頭候補に名乗りを上げた。【前原淳】