侍の4番を侍のエースが制圧した。巨人菅野智之投手(27)が今季初先発し、7回1失点7奪三振で初勝利を挙げた。「日本で一番の打者」と意識する筒香嘉智外野手(25)を、2打数無安打に封じてDeNA打線を沈黙させた。シーズン初登板は1年目から負けなしの4勝1分け。巨人の絶対的エースとして、力投する背中でチームを2年連続の開幕4連勝に導いた。

 無我夢中で両腕を突き上げた。代打が送られて降板が決まった同点の8回。立岡の決勝適時三塁打をベンチ最前列で見届けた菅野が、喜びを爆発させた。「本当にうれしかったです」。WBCの激戦の疲労を考慮され、3年連続で務めていた開幕投手を譲って挑んだ今季初マウンド。敵地での“自身開幕登板”は何が何でも結果がほしかった。

 先の戦いを見据えた覚悟をぶつけた。侍の4番、筒香との真剣勝負3打席は全てが真っ向勝負だった。3回2死二、三塁でも「歩かせることは1ミリも頭になかった。この先、逃げていたら話にならない」と、外角に沈むフォークで投ゴロ。苦い表情が出たのは唯一の失点時ではなく、筒香の3打席目だけだった。フルカウントから攻めの姿勢を貫いた内角低め149キロがわずかに外れ、四球を与えた。「1発打たれてもいい気持ちで勝負したので。ゴウ(筒香)もフルスイングで応えてくれた」。記録上は四球でも、全力で勝負を挑んだ納得感が残った。

 結果で示すと腹をくくっていた。チームに合流した3月25日。東京ドームの監督室に呼ばれ、高橋監督と2人だけで向かい合った。「お前の考えに任せるから」と正直な現状を求められ、「思ったより、疲労はありました」と包み隠さずに答えた。数秒間の沈黙のあと、かけられた言葉は「わかった。後の登板日はこっちが決めるから、そこに向けて調整してくれ」。告げられたこの日の試合を照準に定めた。

 覚悟を携えていた。だから迷わなかった。「自分でどちらかに決めてから、話し合いにいったのではありません」。求められれば、即答で開幕戦に投げる態勢を整えるつもりだった。一方で別の提案をされれば、受け入れるとも決めていた。「開幕戦で自分が投げて勝ちたい気持ちはあります。でも監督の判断に従おうと決めていました」。チームがあってのエースだと理解している。

 初登板で開幕4連勝という最高の結果に導いた。「まだ始まったばかり。4年間の集大成を見せたい」。日本のエース菅野の17年が幕を開けた。【松本岳志】

 ▼菅野が今季初登板を白星で飾った。5年目で初めて開幕カードに登板しなかった菅野だが、これでシーズン初登板は14年から4連勝。巨人でシーズン初登板に4年連続勝利は、53~56年別所、89~92年桑田、93~96年斎藤雅(4年連続開幕戦勝利)94~97年槙原に次いで5人目だ。