ハードな男が、東北を沸かせた。楽天則本昂大投手(26)が、6回5安打1失点の快投でチームを8年ぶりの開幕4連勝に導いた。WBCで戦った硬いマウンドをKoboパーク宮城でも再現。開幕前に調整を続けてきた慣れ親しんだ硬さの上で、ソフトバンク千賀との侍対決を制した。球団新記録となる開幕5連勝へエースがつないだ。

 硬い表情の則本が、本拠地開幕戦のマウンドに上がった。0-0の2回先頭。デスパイネへの7球目、この日最速152キロで空振り三振。キレのいい直球が決まった。4回無死一塁では再びデスパイネに対し149キロ直球で見逃し三振。落差のあるフォークもさえ渡り、千賀との侍どうしの投げ合いを制した。

 8奪三振は、全て直球とフォーク。「満員と聞いていて、かなり緊張していたんですけど。最少失点で抑えられたことが勝ちにつながったのかな」と、硬かった表情は、試合後になって、ようやく柔らかくなった。

 硬いマウンドが快投を呼び込んだ。WBCに出場した則本は、久米島春季キャンプ中からブルペンに設置された「WBC仕様」の硬いマウンドで投球練習に励んできた。日本に帰国し、Koboパーク宮城で練習した28日、球場のマウンドで投球練習をすると不思議な感覚に陥った。「合わない」と何度も首をかしげた。約1カ月間、続けてきた“WBCマウンド”。久しぶりに立つ、ホーム球場の軟らかさに違和感を覚えた。その後も微妙な表情を浮かべる則本。気付けば、100球を超えていた。

 球団のスタッフと話し、開幕前から調整を続けてきた硬いマウンドを再現することに決めた。Koboパーク宮城は、甲子園でもグラウンド整備を担当する阪神園芸が担当している。球団の裏方も協力し、前日3日から入念に水と土を重ね、ハードなものに仕上げた。WBC仕様に生まれ変わったマウンドで、則本は6回1失点。「チームがいい流れで、ホームに帰ってきた。何とか切らないようにと思っていた」と8年ぶりの開幕4連勝へ導いた。

 試合後のヒーローインタビューでは「明日は楽天市場がポイント2倍です。みなさん、買い物して下さい」と表情だけでなく、口も滑らかになったエース。満員のファンと、勝利の儀式「バーン」と右手を大きく突き上げた。エースの手堅い投球で、東北の地がドッと沸いた。【栗田尚樹】

 ▼楽天が09年に並ぶ開幕4連勝。梨田監督にとって開幕4連勝は近鉄時代の03年(5連勝)に次いで2度目だ。この4試合の得点は6点→13点→5点→7点。パ・リーグで開幕から4試合連続5点以上は09年西武以来だが、西武の勝敗は○●●○。開幕から4試合連続5点以上で4連勝は75年阪急、89年オリックス、00年ダイエー、03年近鉄に次いでパ・リーグ5度目。セ・リーグでも64年大洋、77年巨人があるだけで、2リーグ制後7度目になる。ちなみに、2リーグ制後に記録した過去6チームは優勝3度、2位2度、3位1度と、すべてAクラス入りしている。