強いライアンが戻ってきた。ヤクルト小川泰弘投手(26)が8回6安打1失点5奪三振で今季初勝利をつかんだ。6回2死満塁。打者柴田をカウント1-2と追い込んで冷静だった。「開き直って勝負できた」とクイックモーションで投じた145キロ直球は内角いっぱいにズバッと決まり見逃し三振。ピンチを脱しても、表情一つ変えずゆっくりベンチへと歩き始めた。

 期する思いがあった。昨季は自己最悪の8勝止まり。直球が走らなかった。今季はキャンプからプレートを踏む位置を毎日変えるなど試行錯誤。最多勝を取った13年の感覚を取り戻そうともがいた。しかし結果を残せず3年連続で務めた開幕投手は逃した。「悔しいですよ。そこ(開幕)を目指してやってきていたんで。去年の悔しさを晴らすシーズンだと思っている」と心に雪辱の思いを秘めた。

 復活へ、原点回帰を掲げた。テーマは「しっかりと投げきる」。足を高く上げる「ライアン投法」からぶれずにフォームを固め、体重移動の感覚をつかんだ。この日も8回まで球速が落ちず「数字として140キロ中盤から後半が出ていた。いい感覚が戻ってきた」と手応えを口にする。捕手中村も「アイツは空振りが取れる真っすぐを持っているからやるべきことをやれば勝てる」と太鼓判を押す。

 この日は2回に「まぐれです」と2点適時打で自らを援護。奪三振数も21で阪神メッセンジャーに並び、リーグ最多となった。投打の活躍で引き寄せた白星。「勝ちがつくか、つかないかは先発として違う。率直にうれしいです」と逆襲の始まりにようやく笑みがこぼれた。【島根純】