4番の一振りで連勝街道に再突入した。巨人阿部慎之助内野手(38)が、今季3度目の決勝打で試合を決めた。7回無死二塁、中日吉見から右前適時打を放ち均衡を破った。高打率を残しているフルカウントからの一撃が効果的に決まった。開幕から14試合で早くも19打点と勝負強さを際立たせている。投手陣も先発大竹寛から5投手の無失点リレーを完成させた。

 狙い澄ました一振りで勝ち名乗りを上げた。阿部が絶好機で打席に入った。両軍無得点の7回無死二塁。1度もバットを振ることなくフルカウントまで待った。「自分が待ってるボールをどれだけ我慢して待てるか。あの辺をずっと待っていた」。相手バッテリーは外角球のみでカウントを埋めた。この打席、最初で最後の142キロ内角直球を逃さずに捉えた。

 勝負どころでことごとく仕事を遂行するベテランには、経験値から導き出す裏付けがある。2回先頭で迎えた第1打席は、フルカウントから内角142キロ直球に見逃し三振に倒れた。「あの見逃し三振がバッテリーの頭にあったと思う。相手の心理をうまくつけた」。長年、正捕手を務めてきただけにバッテリー心理を読む能力は秀でている。18・44メートルの“見えない攻防”を制してこその一打だと明かした。

 我慢を明確に示す数字がある。今季はフルカウントの場面が9度あり、6打数4安打3四球。打率6割6分7厘の好成績を誇る。「好球必打ってよく言うけど、悪球をいかに我慢できるかが大事」。捕手から一塁に転向し、より打撃の役割が増した。「今は打って貢献するのが一番だから」と、一打に対する集中力が必然的に高まっている。

 頼もしい4番の一打でチームを再び連勝へと好転させた。高橋監督も「やっぱり、さすが。1球という部分で勝負をかけたのかな。きっちり反応したり、前にはじき返すのは技術というか、さすが」と絶賛した。今カード2勝1敗で勝ち越しを決めて、停滞ムードも払拭(ふっしょく)。この週は6試合で8安打を放ち、阿部メーターを64まで進ませた。ナゴヤドームを後にする阿部は「疲れちゃったよ」と漏らしながらも「また来週も頑張ります」と帰路についた。【為田聡史】

 ▼阿部が7回に先制適時安打を放った。阿部は走者がいない2、5回の打席は三振、遊ゴロに終わり、これで走者なしの打席は22打数2安打、打率9分1厘。走者がいない場面では14打席連続無安打中の阿部だが、走者がいる場面では別人。走者一塁で11打数8安打、走者得点圏で20打数9安打と、走者を置いた打席では31打数17安打、打率5割4分8厘の大当たり。4番らしい勝負強さを見せている阿部は、肩書付きの殊勲安打がリーグ最多の7本目、勝利打点も新井(広島)原口(阪神)と並びリーグ最多の3度目となった。