指揮官の執念が呼んだ勝利だった。阪神が終盤に競り勝ち、今季のセ・リーグで初めて広島に勝ち越した。金本知憲監督(49)は、この日の一戦を序盤の大一番と位置づけた。「今日の試合は僕の中で、すごくポイントになる試合と思った」。3戦目を落とせば、開幕カードと同じような展開になる。昨年は7勝18敗と大きく負け越した相手だ。

 指揮官は大胆に動いた。開幕から初めて上位打線を変更。1番にルーキー糸原、2番に高山を起用。広島は左腕不在とあって、5人の左打者で勝負をかけた。「ズラッと左を並べてね。昨日の糸原の振りの速さに期待して1番で起用した」。3回には糸原、高山の粘りが同点劇を演出。前回封じられた九里を攻略した。

 5回裏にはまだ75球だった先発能見に代打を送った。「(6回は)右が並ぶし、能見の今の調子。尻上がりによくなったが、あそこはズバッと迷いなく」。好調の桑原が2回を完璧に抑え、早めの継投策は的中した。

 8回には糸原の二ゴロを巡り、退場寸前の猛抗議。「セーフだよ、あれ。セーフでしょ?」。指揮官の思いがナインに伝わる。高山が決死の盗塁を決め、原口が決勝打を放った。2位を死守し、首位広島に2・5ゲーム差で食らいついた。【田口真一郎】