春の珍事とは言わせない。今年の楽天は強い。3-3の延長10回1死一、二塁から代打・聖沢諒外野手(31)が、サヨナラの適時二塁打を右中間へ放った。今季2度目の同一カード3連勝を飾り、球団史上初となるリーグ10勝一番乗りを達成した。首位を守るチームに、Koboパーク宮城に集まった史上最多となる観客動員数2万7165人もドッと沸いた。

 グラウンド上に、楽天ナインの笑顔があふれた。輪の中心にいたのは、聖沢だった。同点の延長10回1死一、二塁。12日西武戦以来となる代打で登場した。前回は左飛に終わった。「余裕がなかった。そこを反省してベンチで内野、外野の守備位置を見て、落ち着けていた」。真ん中149キロ直球を振り抜き、右中間まで運んだ。「どこに飛んだか分からなかった」。興奮状態のまま二塁を回り、ベンチから飛び出してきた仲間に祝福された。

 球団創設13年目にして、初のリーグ10勝一番乗り。今季2度目の同一カード3連勝も重なった。「貯金を作ることが大変、なくなるのは早い。借金を減らすことは簡単」(聖沢)。その思いをバットに込め、今季最長の4時間7分のゲームに終止符を打った。史上最多の観衆2万7165人からの大歓声を受け、梨田監督は「空席がなかったし。最後はヒーローも出た。やっている僕らも、ファンも集中力があった」と統一感を感じていた。

 本物の強さがあるから、ファンも駆け付ける。今年は終盤での粘り強さが光る。12試合を終えて合計65得点。7回以降(延長を含む)挙げた得点が25に対して、序盤の1~3回は19点。4~6回は21点。この日も先に2点を先制されながら、最後に追い込んだ。梨田監督も常々「みんなの粘りを感じる」と言えば、銀次と茂木は「自分が打てなくても、どこからでも点が取れる」と口をそろえる。

 そこに安定感抜群のリリーバーたちが合わさる。7回を任される新人森原は、9戦で防御率0・00。8回の新外国人ハーマンも8戦で1失点。守護神・松井裕は9戦で6セーブをマーク。昨季まで固定しきれなかった中継ぎ陣がフル回転している。打線が持つ共通認識・諦めない心と、強固なブルペン。今年の楽天は「後ろ」が強い。【栗田尚樹】

 ▼楽天が今季初のサヨナラ勝ちでパ・リーグ10勝一番乗り。今季の広島が開幕12試合目(10勝1敗1分け)に10勝到達しているが、パ・リーグで開幕12試合以下で10勝は90年西武(10勝2敗)以来、27年ぶり。楽天では09年の17試合を抜く最速10勝となり、リーグ10勝一番乗りも球団史上初めてだ。ちなみに、パ・リーグで開幕12試合以下で10勝したのは90年西武まで過去12チームあり、そのうち6チームが優勝している。