待ってました! 阪神糸井嘉男外野手(35)が甲子園で初のお立ち台や。1回無死二、三塁で甲子園では移籍後初の適時打となる右前打。初の甲子園V打で2位浮上を呼び込んだ。これで打点を挙げた試合では6連勝。虎党ももちろん「最高です!」。糸井が打てば勝つ、神話誕生の予感や~。

 糸井自身も、虎党も待っていた瞬間だった。1回無死二、三塁。カウント1-1から井納の内角直球を右前へ。三塁走者の高山が悠々と生還。二塁走者の上本も迎え入れる2点打だ。

 「(4番の)福留さんにつなごうと思っていた。甲子園でタイムリー打ってなかったんで、打ちたいと思っていた」

 得点圏打率は4割超だが、意外にも甲子園初タイムリー。18日中日戦以来、6試合も適時打が止まっていただけに、一瞬でモヤモヤを吹き飛ばした。しかも決勝打だ。

 尽きることのない探求心が糸井の強み。雨天中止になった前日26日に「こん棒」を手に入れた。オフの自主トレでDeNA筒香が使用していた特注バットだ。ヘッドからグリップまで同じ太さ。通常のバットよりも芯が中央にあり、前で球を打ってしまうと芯を外し、飛ばないつくりになっている。室内練習場で居合わせた筒香にお願い。自身のバットを差し出す代わりに、コレクションに加えた。後輩であろうが、教えを請うし、お願いもする。偉ぶることはない。それが誰からも愛される理由でもある。

 初めて上がった甲子園のお立ち台。その感想を問われると「最高です」とボソッとつぶやき、満員の聖地を沸かせた。隣には来日初安打&初タイムリーのキャンベルと、月間10セーブのドリス。糸井は「俺にも通訳いるやろ!」と、周囲を笑わせてクラブハウスに引き揚げた。

 初回は高山、上本、そして糸井。4番福留も安打で続いた。速攻の4連打に金本監督も「久しぶりやね。ここ何試合か、あまりバッティングの調子が良くなかった。そろそろ上向く頃じゃないのかな、というのはあったけど」。25日に完封負けを喫していたが、初回の好機をしっかりモノにした。糸井が打点を挙げれば6連勝。さらに、この日は2位浮上も呼んだ。3番糸井の効果はやはり絶大だ。【桝井聡】