ハイタッチよりも先に、女房役に頭をはたかれた。ロッテ二木康太投手(21)は「欲張ったというか、自分がバカでした。情けない。田村さんに頭が上がりません」と、ヒーローなのに恐縮しっぱなしだった。2-0で迎えた9回2死。プロ初完封を無四球で飾る目前で落とし穴にはまった。オリックスT-岡田に対し、カウント1-1。田村のフォークのサインに首を振った。真っすぐで追い込んでからフォークを振らせるつもりだった。しかし、146キロが真ん中へ入り、右越えにソロを浴びた。

 悔いは残ったが、次の武田を2球で処理しチームトップの3勝目。最下位のチームに、今季初の3連勝をもたらした。勝因はストライク先行。「テンポと制球を良くするため」、去年のノーワインドアップをセットに変えた。狙いどおりさくさく抑え、最速147キロで5安打1失点9奪三振。伊東監督も「無四球は評価できる。苦しい展開で、よく我慢した」と、4回以降は追加点がない中、投げきったことをねぎらった。

 真価を問われるシーズンだ。初めてローテ入りした昨季は、いわば“育成枠”。悪い時期もあったが、ほぼ1年1軍に置いてもらい7勝9敗だった。今年は違う。ダメなら2軍落ちもある。「去年、我慢して使って良かったと思われる投球をしたい」と自覚する。だから、オフから通年でやることを念頭にトレーニングを重ねた。お立ち台の第一声は「すいません」。昨年4月のプロ初勝利も9回1死から失点し、完封を逃した。次は、素直に喜ぶヒーローになる。【古川真弥】

 ◆ロッテ田村の話 二木が9回にT-岡田に被弾して完封を逃し、「2死だったので、走者が出るまでは二木に任せようと。試合後『アホ』と言いました(笑い)。今日は全部の球種が良かった」。

 ◆ロッテ英二投手コーチの話 二木がサインに首を振って被弾し、「自分なりに考え勝負したが、9回4番。1-0ならどうするんだと。調子に乗っちゃいけない。高いレベルを求めている」。