開幕から不安定な投球が続き、5月27日に出場選手登録を抹消された。約2カ月半にも及んだ2軍生活を経て、満を持しての復帰マウンド。登板前、指揮官は「今後、彼の人生を左右するといえばオーバーかもしれないけど、僕はそれぐらいの目で見たいと思う」と表現していた。制球難から崩れる「負の連鎖」との決別を証明したかったが、現実は厳しかった。

 1回はバント安打を含む2安打と四球で1死満塁とされ、5番松山に左翼フェンス直撃の先制打を浴びた。松山への初球にはこの日最速159キロを計測。直球の強さが際立ち、制球も大荒れはなし。立ち直りも予感させたが、徐々に投球は暗転していった。

 2回1死、9番大瀬良への直球がすっぽ抜けて左肩付近に直撃。かつて自主トレを共にした先輩に死球を与えた後、制球が乱れ始めた。3回は先頭4番鈴木への四球から連続タイムリーを献上。4回2死では2番菊池に変化球が再びすっぽ抜け、左肩付近への死球で両軍がホームベース付近に入り乱れた。最後まで復調の兆しを見せられず、屈辱の降板で4敗目を喫した。

 試合後、藤浪は厳しい表情のまま愛車に乗り込んだ。普段はどんな乱調後も丁寧に取材対応する男が多くを語らなかった。「チームにも、死球を当ててしまった相手の選手にも申し訳ない投球でした」。広報にコメントを託すしかないほど、憔悴しきっていた。

 金本監督は「ボールはまずまずスピードも出ていましたし、変化球でもカウントを取れていた。あと1人で5回3失点ぐらいで、試合を壊したわけではないし」としたが、再度、出場選手登録を抹消されることが濃厚となった。2連敗を喫し、首位広島とのゲーム差は10・5まで広がった。ダメージは大きいが、下を向いている暇もない。【佐井陽介】