シリーズ史に残る激戦を制した。ヤクルトが「SMBC日本シリーズ2021」第6戦に勝利し、20年ぶりの日本一に輝いた。ナインの手で神戸の夜空に10度舞った高津臣吾監督(53)が、日刊スポーツに手記を寄せた。「絶対大丈夫」と言葉で選手の背中を押し続けた今季。鼓舞する一方で、意識したのは程よい距離感だった。

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ヤクルトファンのみなさま、優勝おめでとうございます。今年のメンバーで戦い、チャンピオンになれたことがうれしいです。20年前の日本一は僕は現役で、若松さんが監督だった。今と似たような雰囲気があって、チームワークがほんとに良かった。それからもう20年か、というのがいま一番に思うことかな。投げているときは、バッターを抑えることしか考えていなかった。監督となってからは祈るばかり。なんとか頑張ってくれ、なんとか抑えてくれってね。

僕は野村監督のもとでのプレーがほとんどで、プロ野球生活の中では大半を占めていた。野村監督は、僕に対してああだこうだ言ってこなかったけど、唯一言ったのは、毎回セーブしたら「ありがとう。サンキュー」。その言葉だけで頑張れた。僕も監督になって、絶対ネガティブなことは言わないようにはしている。こうしましょうああしましょう、こうすれば大丈夫、というような見方なので、これやったからダメじゃんというようなことは、全体的には絶対言わない。個人的にはこうしなきゃいけないとか、反省点だねというのはもちろん言うけど、みんなの前では絶対前向きに「よしやってやろう」となるようなことをイメージする。そういう気持ちになれる言葉というのは探して言うようにはしている。

練習のときに話す言葉のほとんどは野球に関係ないことが多い。「昨日なに食べた」とか「家族元気か」とか。日本シリーズ中も奥川に「また背が伸びただろ」と言ったら「変わりません」と。「ああそうか」と。グラウンド上ではほぼ雑談。監督と選手はすごく難しい微妙な距離感があると思う。監督なんてペラペラ話しても萎縮するだろうし。だからといって、偉そうに威張ったりするのも大嫌い。向こうから話し出すのもすごく難しいと思うから、できるだけこちらからコミュニケーションを取るようにはしている。でも、ロッカールームにはほとんど行かない。通るときにチラッと中は見ることはするけど、あまりズカズカ行かない。絶対みんな身構えちゃう。監督が行っちゃうとリラックスできないので、極力行かないようにはしている。

これまでたくさんの国でたくさんの監督さんに仕えてきた。どの監督も共通するのは、勝つことが一番の目標であり、それぞれ方法は違えど、そのためにどうするか。そこに向かっていく姿勢は、態度であり、言葉であり、示していかないと。勝ちに貪欲に向かっていく姿勢を見せないと、選手はついてこない。僕も含めてチーム一丸となって、熱くなっているところを出していかないとと思った。一枚岩でつかんだ20年ぶりの日本一。本当に強くなった。体力もついたし、少々じゃ音を上げなくなったし。気持ちの強さ、体の強さ、頭の中の野球力。いろんな強さが身についたと思う。

今回は勝つことの難しさを経験しながら達成した。次はそれを続けていく難しさという、我々がまだ知らないところに突入していく。今のままでは絶対ダメだとは思う。今の強さではダメ、今の考え方ではダメ。180度変えなさいというわけではないけども、いろんな知識をどんどん勉強して、いろんな強さを身につける。強いチームを維持することはすごく難しいと思う。ファンには変わる姿を期待していてほしい。いい意味で、前進、進化、進歩していきたいなと思う。(ヤクルト監督)

ヤクルト20年ぶり日本一、高津監督が10度宙舞う/日本S第6戦詳細>