ダイエーのルーキー左腕、杉内俊哉投手(21=三菱重工長崎)が、プロ初先発で初勝利を挙げた。1回に先頭打者から3球三振を奪うと、7回途中まで4安打1失点。4回にサブローの打球を足に受けるアクシデントを乗り越え、6回まで毎回の8三振を奪う力投だった。高校時代からのライバル松坂(西武)にも、自らの力を証明した。即戦力左腕の活躍でチームは3連勝。開幕ダッシュに成功した。

 初めて公式戦で対決するプロの打者を、わずか3球で料理した。プロ初先発。杉内は4万7000人の大観衆にも、動じない。1回表。先頭サブローに対する1球目は、141キロの直球だった。「8割の力で投げることを心掛けた」。2球目はスライダーでハーフスイングを取ると、3球目に自慢のカーブを真ん中低めに落として空振りを奪った。いきなりの3球三振。どよめくスタンドにも「自分は小さいときから真っ直ぐとカーブのピッチャーですから」。プロの世界のスタートは、自分が幼いころから貫いてきた「三振術」の披露だった。

 6回まで毎回の8三振を奪ってみせた。そのうち5三振のウイニングショットは140キロの直球。3回に里崎から奪った三振はこの日最速の144キロの直球で空振りさせた。オープン戦でみせた「カーブ投手」のイメージを逆手に取るような投球内容でもあった。シドニー五輪、全日本と大舞台を踏んできた男らしいクレバーな配球。公式戦まで本来の姿を温存していたかのような姿勢は、とても新人とは思えなかった。

 ライバルである西武松坂に成長した自分を見せつけたかった。前夜、松坂から「普通に力を出せば大丈夫」と励まされていた。「真っ直ぐで追い込んでカーブで三振を取れるのが分かってきた」。テレビで熱視線を送っているであろうライバルに、直球でも三振が取れる姿をみせることがきた。松坂への思いは、気迫にもつながる。4回。サブローの投ゴロを右足首に受け「ビリビリして足が震えた」。そのアクシデント後も4三振。松坂に弱みをみせるわけにはいかなかった。「(いつか)投げ合いたいという気持ちは強い」と4月12日から始まる西武3連戦に照準を定めた。

 「杉内で勝ちたいんだ」と話していた王監督も納得の表情だ。「5回からヘバったけど、4回までは文句なし」。昨年、先発左腕はヘイニーと松でわずか3勝だけ。のどから手が出るほど欲しかった先発左腕の出現に指揮官も「よかった」と胸をなでおろした。

 「別にプロに通用しなくてもいい。太く短くというタイプなんです。思い切りいくしかないですから」。そんな杉内だが、ウイニングボールは「マミーにプレゼントします」と母1人で育ててくれた真美子さん(42)への贈り物に、そっと右ポケットにしまった。【浜崎孝宏】【2002年4月2日付

 日刊スポーツ】