ダルビッシュが落ち込む怪物ルーキー中田に救いの手-。日本ハム・ダルビッシュ有投手(21)が10日、中田翔内野手(18)について「どんなに実力がなくても、1軍にいなきゃいけない選手だと思う」と擁護した。中田は現在11打席ノーヒットで打率1割3分3厘、2軍落ちのがけっぷちに立たされている。「中田よ、奮起せよ」というゲキを込めたダルビッシュのメッセージを胸に、中田は与えられた残り3試合のテストに臨む。

 ダルビッシュの語りのスイッチが入ったのは、父親ファルサさんと札幌市内の百貨店で行った父子トークショーの後だった。ここ数日で激しく落ち込み、自ら「2軍に落としてもらった方がいいくらい」とまで発言していた中田に対して質問が及ぶと一気にスパークした。

 ダルビッシュ「どんなに実力がなくても、僕としては1軍にいなきゃいけない選手だと思うし、どうしてもいてほしい」

 中田と接する中で、怪物ルーキーが、ひどく傷ついていることを感じ取っていた。ダルビッシュは「中田に対して批判する人がいるけど、本人は言わないけど、思った以上に傷ついていると思う。行動とか態度とか目に付くところはあるかもしれないけど、中学、高校とずっと1番でやってきて、誰でもそうなるし、まだ18歳の高校生。逆境をどうはね返すか、を心得ていないので、チーム全体で協力してみんなで教えてあげないといけないと思う」とも話した。

 実は9日の試合後、札幌ドームで中田が特打を行ったが、実はこれもダルビッシュの助言だった。前向きな姿勢をアピールするため、あえて打撃ケージに向かわせた。「そういうのをコーチも見ているから、昨日はちょっと(特打に)行ってこい、と言った。どこが悪いか聞け、とも言った」。

 11打席無安打が続き、キャンプ序盤のノリノリからは一転して、豪快な言動がなくなっている中田に「だいぶ弱気になっている。キャンプ中の『誰だって打てますよ』っていう(奔放な)のがない。怒られていたんで落ち込んでいたし、一緒にいても暗い感じがあった」と、奮起を促す特打指令だった。

 今年1月の日本ハム本社イベントで初対面し、互いの印象を「少し怖い」(中田)「私生活をしゃべりすぎ」(ダル)とダメ出しから始まった有&翔の人気コンビ。キャンプで食事はもちろん、ロッカールームで卓球もやった。2人で並んで走る日も増え、今やダルは弟のようにかわいがり、中田は兄のように慕っている。

 あと3試合で1軍の当落が決まる。悩んでいる暇などない-。エースの投げた異例のメッセージは、弱音を吐く後輩ルーキーに無限大のポテンシャルを感じているからこそのゲキでもあった。【村上秀明】