<練習試合:阪神2-1巨人>◇12日◇甲子園

 球児が08年の本拠地初登板で“魔球フォーク”を徹底チェックした。巨人との無観客練習試合で阪神藤川が7回から登板。控え中心の巨人打線を相手に2回無失点の内容だった。春季キャンプから習得に取り組んでいるフォークを多投。岡田監督に「魔球とちゃうか」と言わせるできの良さだった。若手の小宮山慎二捕手(22)を女房役に指名するなどで徹底マスターを目指す。

 余裕のマウンドさばきだ。今年初めて甲子園で登板した藤川が、宿敵の巨人打線を「実験台」にした。精度向上を目指すフォークの球筋チェックにこだわる。7回、売り出し中の先頭坂本を難なく左飛に仕留めると奪三振ショーの幕開けだ。古城を追い込み、フォークを投じる。抜けて甘いコースに収まったが想定外の配球に古城のバットは動かない。脇谷には右腕を振り切って、球を落とす。軽く地面にバウンドさせ、空を切らせた。

 トレードマークの剛速球は投げなかった。控え相手とはいえ、昨季とは違うスタイルで連続Kをマーク。その充実ぶりに岡田監督も思わず冗談を口走った。

 「(球種を問われ)企業秘密や。魔球ちゃうか!

 いつも投げている球やったらええけど、そんなん言われへん。もっとワンバウンドになると思ったけどな」

 前回登板した5日の広島戦(京セラドーム大阪)でフォークを見切られる場面があり、この日は落差をチェックする課題があった。登板前は、首脳陣に異例のリクエスト。先発マスクをかぶったベテラン矢野ではなく、若い小宮山とのバッテリーを申し出ていた。指揮官も「ワンバウンドが何回も体に当たると思ってたん違うか。魔球やから」と笑顔で内幕を明かす。

 今年2月には宜野座キャンプで「フォークの神様」の異名をとる杉下茂氏(野球評論家)から直接指導を受けた。これまでも用いていたが、フォークの精度がさらに高まれば、速球とのコンビネーションも一層際立つ。久保チーフ投手コーチも「相手が意識するようになればいい」と話す。

 2イニング目の8回は速球中心の配球に切り替えた。0封した藤川も「(フォークの精度は)あまりよくなかったんですけどね。魔球の内容?

 言えんなあ。企業秘密や」と煙に巻いた。火の玉ストレートを生かすためにも“新球”を磨く。マスターできれば、球児はさらに手に負えなくなるはずだ。【酒井俊作】