<オープン戦:ソフトバンク9-0ヤクルト>◇13日◇神宮

 開幕投手に吉兆だ。ソフトバンク杉内俊哉投手(27)がヤクルト戦に先発し5回1安打無失点。3試合14イニング無失点でオープン戦を締めた。紅白戦を通じて16イニング連続という“無傷”で「3・20」の開幕マウンドに立つ。同様に23イニング連続無失点で開幕した昨年も初陣で完封勝利。プロ1年目からシーズン初登板は6連勝中の左腕が、開幕白星の準備を整えた。

 オープン戦でスコアボードに「0」を14個、これに紅白戦を合わせれば16個も並べた。開幕投手に内定している杉内が今年も「プレシーズン」を無傷で乗り切った。

 公式戦前のラスト登板でヤクルト打線を牛耳った。リグスに2四球を与えたものの、凡打につぐ凡打で、外野に飛んだ打球はわずか2。5回を投げ内野安打1本、二塁さえ踏ませなかった。「球が暴れていた。コントロールできなかったけど、0点で結果オーライ。右打者の内角は悪くなかった。外角はズレていたけどね」。完全主義者を自認するだけに満点解答はない。それでも周囲を納得させるには十分すぎる内容を見せつけた。

 春季キャンプでの左ふくらはぎ痛、2月25日西武戦を緊急回避した左手中指違和感の不安は消え、首脳陣の期待感はグッと膨らんだ。まずは王監督だ。「完ぺきだった。無失点?

 打ちやすい投手じゃないから、それくらいやってもらわないと困る。普通に投げればそんなに打たれない。順調な調整できている」。投手陣を束ねる杉本投手コーチも賛辞で続いた。「開幕は安心?

 キャンプの時は多少の不安材料もあったが、オープン戦に入ってからは思い通りに投げている」。

 昨年も紅白戦2試合、オープン戦4試合で23イニング連続無失点だった。そして楽天相手の初戦でプロ初となる無四球完封勝利を挙げた。結局、40イニング連続無失点まで延ばしており、ゼロ行進は開幕OKのバロメーターなのだ。ここまで許した安打は3本(昨年9安打)で被安打率(9イニング当たりの被安打)は1・93(同4・76)と内容も光った。「去年より全然いい。真っすぐが全然違う。チェンジアップもいいね」。杉内自身も1年前の吉兆以上のものを感じている。

 「鼻炎のままこっち(遠征)に来た」とちょっぴり赤い鼻をすすり、プロ7年目で初となる開幕投手について「投げる機会があれば、何点取られてもいいから勝ちたい」と言い切った。昨年チーム最多の15勝という実績、プロ入りした02年からシーズン初登板は無傷の6連勝という勝負強さも持った杉内こそ「3・20」のマウンドにぴったりだ。

 昨年まで4度開幕投手を務めたエース斉藤は米国で右肩のリハビリに取り組む。太平洋を挟んだメール交換で互いの近況を知る。「ないしょ」と内容は明かさない杉内だが、渡米前にチームのけん引役を託されている。準備は整った。背番号「47」は静かにプレーボールの時を待つ。【押谷謙爾】