<横浜1-4巨人>◇9日◇横浜

 巨人が意地をみせた。9日の横浜2回戦(横浜)で内海哲也投手(25)が8回1失点と好投。6回にはラミレスが先制2ランで援護射撃し、好投していた那須野を攻略した。前日8日、渡辺恒雄球団会長(81)が「2位か3位でいい。こんな調子で巨人が優勝すると思うか」などと水を差す発言。確かに3勝7敗1分けと出遅れているが、引き分けを挟み今季初の連勝と、反撃態勢を整えつつある。

 内海には断固たる決意があった。右脇腹痛でキャンプ早々のリタイア1号。原監督に叱責(しっせき)されたことがずっと頭にあった。「どんな思いで監督が話したか。情けないし申し訳ない。絶対やりますから」。チームを上げ潮に乗せる。苦い経験で謙虚さを学んだ昨季14勝左腕は、引き換えにハートの強さを手に入れていた。

 思いをマウンドで表現してみせた。横浜那須野との我慢比べ。2、3、5回と得点圏に走者を置いた。だが「変化球より、今日は良かった」という直球を低めに集め、本塁にはかえさない。5回2死一、二塁で、打席には4番の村田。3球直球を続け、最後はチェンジアップを沈めた。空振り三振を奪うと「よっしゃぁ!」とほえた。

 これで乗った。勝負どころの6、7回が「一番気合が入った。とにかく全力で」。尻上がりに調子を上げた122球だった。実は横浜スタジアムのマウンドは、昨年後半に改良を済ませていた。Kスタ宮城、札幌ドームにならい、粘性の高い土をブレンド。硬さと両立した。前日8日の雨と相まって、軟らかめのマウンドを好む内海にマッチした。“地の利”をしたたかに生かす。立ち上がり好調だった那須野とは、そのたくましさが対照的だった。

 力投を後押ししたのは、原監督の攻撃的なタクトだ。7回表、1死一塁。3点目の適時打を放った木村拓に、代走脇谷を送った。打者内海の2球目。バントエンドランのサインを出した。好スタートの脇谷に慌て、打球を処理した横浜桑原謙が一塁へ悪送球。二、三塁とチャンスが広がり、高橋由の遊ゴロでダメ押しの4点目が入った。「いい点の取り方だったと思う。4点目がどういう意味を持つか。そう理解してください」。1安打で奪った2点に、指揮官は胸を張った。

 4番ラミレスに開幕戦以来の本塁打が飛び出し、最後はクルーンが2セーブ目を挙げての完勝。原監督は「内海は本当に粘り強く投げてくれた。気持ちでしょうね。チーム全体が粘りの中で、歯車がかみ合って進んだ。チャンスでいかにスキを見て、相手のミスに乗じていくか」と、引き分けを挟んで今季初の連勝に手応えを得た。

 昨季のリーグ覇者は、ちょっと出遅れたくらいで下を向くほどヤワな集団ではない。渡辺球団会長は「今年は2、3位でいい」などと弱音を吐いた。したたかにたくましく、最下位脱出を果たした1勝。球団トップの目にはどう映ったか。【宮下敬至】