<日本ハム4-2楽天>◇9日◇札幌ドーム

 不動の3番が、ノッてきた。日本ハム稲葉篤紀外野手(35)が、先制2ランを含む3安打3打点の活躍で楽天に連勝し、チームを今季初の3連勝に導いた。昨季パ・リーグ首位打者のタイトルホルダーも、今季開幕直後は1割台にとどまっていたが、いよいよ本領発揮してきた。5番ターメル・スレッジ内野手(31)も勝ち越しの第3号本塁打を放ち、主軸がそろい踏み。首位西武に0・5差と迫り、今日10日の首位奪取も見えてきた。

 ピチピチの若さあふれるガッツポーズが、今季初の3連勝へののろしだった。ベテラン稲葉が、はじけた。1点リードの7回2死三塁。カウント0‐1からの2球目。有銘の142キロシュート、ファーストストライクに反応した。二遊間をゴロで抜くダメ押し適時打。一塁到達前に右手を力強く振り上げる。ベースに到達、オーバーランすると、今度は左手。演歌歌手がこぶしを効かした時のように、体の前で小さく何度も突き上げた。

 14年目、35歳。チーム野手最年長は、しみじみと語った。「あ~疲れたねぇ。1点、どうしても欲しいところで出た。いい場面でね、頼れる打者と言われるようにしたいからね」。シーズンイン直後から打撃不振。本拠地からの開幕2カード、6戦で打率1割台と低迷した。早出しての連日の特打を敢行。試合前には資料室へこもり、好調時の映像などを食い入るように目に焼き付けた。

 トンネルを一気に抜けた。1回には1死一塁から先制2ラン。フォークを完ぺきにすくい上げた。3番打者で初回に走者がいるのに「2死でしたっけ?」とアウトカウントを忘れるほど、集中していた。田中が犠打を失敗直後に、嫌なムードを一掃する一発になった。「非常に意味がある。チームにとって大きかった」。梨田監督も絶賛する働きだった。5回には中前打を放ち、5戦ぶり2度目の猛打賞に、今季初の3打点と爆発。復調気配は完全に見えた。

 あの時を知るからこそ、どんな道も抜け出せる。キャンプイン前。昨年12月の北京五輪アジア予選のDVDを見直した。日の丸を背負い、ミスが許されない緊張感の中での3試合。「今、見ても鳥肌が立つ。あんな経験、今までしたことがなかったから」。そんな極限状態の中で、不動のレギュラーを張って打率5割(10打数5安打)をマーク。8月の本大会切符獲得の原動力の1人になった。後には引けない戦いを経験した。シーズンに入っても前を向き、体をいじめ、短期間で自力で調子を上げた。

 今日10日、投手陣の大黒柱ダルビッシュへ、今季初の同一カード3連勝へのバトンを託した。首位西武が敗れ、勝てば、首位浮上の大一番を演出した。「たまに星が飛んでるんだよ」。不振による肉体的、精神的な疲労蓄積での幻覚で“プラネタリウム”状態だったという。もう星空が消えるほど痛快に闇を抜けたバットマンはこの日、現実世界の「白星」へと変えた。【高山通史】