<日本ハム1-0楽天>◇10日◇札幌ドーム

 本塁を駆け抜ける走者を、楽天岩隈は表情なく見送った。1点も与えられない中での7回1死満塁。打者はスレッジ。カウント2-2から三振を狙ったフォークは内角高めに浮き、空振りさせることはできなかった。「相手もいい投手だったから、1点もやれないとは思っていましたが…」。左犠飛で先制点。ハイレベルのエース対決に勝つためには、それすら許されなかった。

 慎重過ぎた投球が、わずかに勝利から道を外れさせた。7回1死一、二塁から4番高橋に、際どく外角を攻め続けた。しかし結果は四球。「攻めていった結果ですから。でももったいなかった」と悔やんだ。「よく投げたけどな。これぞ見殺し」と話した野村監督も「闘争心が先か、慎重さが先か。まず闘争心でしょ。大胆かつ慎重、そういう順番だ。こういう経験をして成長していくんだろう」と注文をつけた。

 勝負への準備は1週間前から始まっていた。3日のロッテ戦は7回2安打無失点、78球の完封ペースだったがあっさりとマウンドを降りた。「1年は長いですし。それに次はダルビッシュですからね」。疲労を最小限度にとどめ、エース同士の投げ合いに万全の準備を整えていた。この日も試合前に「今日は勝ちますよ!」と宣言していた。勝利にかける気迫が、珍しく声となって外に出ていた。

 これでチームは6連敗で10敗目。借金も3に増え、野村監督は「毎日毎日、ボヤき疲れたよ」。エースの連続無失点記録も24イニング目で途絶えた。それでも「今日の投球でチームに勢いを与えられればいい。ダルビッシュとは次に投げ合ったら、今度は勝ちたいです」と気丈に話した。最後まで前を向いたエースの投球がチームに一筋の光を差した。【小松正明】