<広島0-7中日>◇13日◇広島

 中日の吉見一起投手(23)が広島戦で2試合連続完封を決め、開幕以来の連続無失点イニングを「20」に伸ばした。球威、制球ともいまひとつで11安打を浴びたが、今季最多17安打で7点を奪った打線にも守られ、2勝目をマークした。11安打以上打たれての完封は、89年の新浦(大洋)以来19年ぶり、セ・リーグ5度目になる。エース川上が登録を外れる中、プロ3年目の「ミスター0」が強烈に存在をアピールした。

 いいのか、悪いのか。不思議な雰囲気のままゲームセットを迎えた。吉見は最後のアウトを見届け、捕手谷繁を拝むようにグラブと右手を合わせた。11安打完封。被安打11以上の完封は、大洋新浦が89年8月4日巨人戦(横浜)で13安打を打たれて以来。記録的なユニーク完封に「いいところはないです。谷繁さんが上手に上手にリードしてくれた」と苦笑した。

 2回以降、毎回安打を浴びた。最速142キロ止まり。制球は狂い、4回には栗原に死球を与えた。6回前田智に右翼へ大飛球を打たれるとしゃがみ込んだ。失速して右飛となったが、ヒヤリとする場面は続く。8回2死一、二塁では前田智のピッチャー返しをグラブでたたき落とし、一塁送球アウト。綱渡りだった。

 最後は落合監督の無言のゲキに奮い立った。9回1死二塁で外野のシフトが変わった。守備の弱い左翼和田が下がり、藤井が投入されて中堅へ、中堅英智は左翼へ。同監督が「だからああいう布陣にしたんだろ」と振り返る“完封シフト”だ。「ベンチの意思を感じました。攻めるんだ、攻めるんだと言い聞かせた」。萎えそうになる心にムチ打ちピンチを脱した。

 ミスター0だ。オープン戦3試合15イニングを失点0で投げ切り、シーズンもいまだ無失点。前回6日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)ではプロ初完投&初完封をマーク。連続完封で20イニング無失点とした。

 粘りの源は昨オフ参加したドミニカ・ウインターリーグでの経験だ。試合球を使い回す劣悪な環境の中、各地から集まる選手たちのハングリー精神に胸を打たれた。「手を抜くイメージがあった外国人選手が一塁まで全力疾走していた」。聡子夫人(24)と結婚もし、甘さを捨てた。

 昨年の中日で1人投げ抜いての完封は、4月17日阪神戦の山本昌の1度だけ。早くも2度の吉見は、もはや投手王国中日に欠かせない。【村野

 森】