<阪神1-4ヤクルト>◇29日◇甲子園

 小さな左腕が大きく見えた。ヤクルト石川が早くも昨季の4勝を上回る、両リーグ単独トップの5勝目を挙げた。ストライクからボールへ。内外角の制球だけでなく、緩急と低めを巧みに操り、首位を快走する阪神打線に的を絞らせなかった。

 1本の長打も許さず、8回5安打1失点。「腕を振って投げることができました。5勝目?

 今日だけ喜んで、また明日から切り替えます」と、はじける笑顔を見せた。球団での4月中での5勝目は、やはり小柄な左腕の軟投派として活躍した安田が75年にマークして以来、33年ぶりの快挙となった。

 1回に2番平野、3番新井の連打からピンチを招いたが、4番金本を外角のスライダーで空振り三振に抑えた。7回無死一、三塁の場面でも、関本をきっちりと低めのシュートで併殺打に仕留め、最少失点で切り抜けた。捕手の福川も「めちゃめちゃコントロールが良くて、リードしていて楽しかった」と満足そうに言った。

 石井一(西武)や藤井(日本ハム)といった、長年チームを支えてきた先輩投手がオフに移籍し、今季から投手キャプテンに就任した。「言葉で引っ張るタイプではないですからね」。照れながら話す一方で、責任感は強い。投球内容だけではなく、練習に取り組む姿勢などでも、村中ら若手も多い投手陣の見本になれるようにとの思いが、良い成績を引き出している。

 エースの04年7月24日以来の甲子園での白星で、チームはわずか1試合で借金を返済。高田監督は「(石川は)持ち味を出していたね。去年の勝ち星を越えたといっても、毎年2ケタ勝っていた投手だから」と当然ととらえている。初の月間MVPも見えてきた石川も「(チームが)5割復帰できて良かったです」とあくまで謙虚だった。【松本俊】