<ロッテ0-5西武>◇2日◇千葉マリン

 144球のすべてに気持ちを込めて、スコアボードに9つのゼロを並べた。普段はめったに感情を表に出さない西武岸孝之投手(23)が、珍しく興奮していた。「これまでのピッチングがホントに納得いかなくて…。勝ちたい。今日はその気持ちだけでした」。1カ月ぶりの白星を2安打完封で飾り、両リーグ一番乗りの20勝目をもたらした。

 勝てなかった1カ月間は腕が振れず、中途半端な球を痛打されることの繰り返しだった。中でもひどかったのは立ち上がりで、5試合に登板し3試合で初回に失点していた。「とにかく腕を振ろうと思った。初回から思い切りいった」。直球の威力が増したことで、生命線であるスライダーのキレが戻った。4月9日、5回途中8失点でKOされたロッテに借りを返した。

 今季、イニングの合間に首脳陣に怒鳴られたのは1度や2度ではない。だが、三塁を踏ませなかったこの日の内容は、文句のつけようがなかった。小野投手コーチは「最高だよ。言うことない」と絶賛し、渡辺監督も「あまり気持ちを出さないタイプなのに本当に気合が入ってた」と満足そうにうなずいた。貯金は今季最多の8。「珍しく何も言われませんでした」と胸を張った岸の熱投が、首位西武をさらに勢いづけた。【広瀬雷太】