<日本ハム12-5楽天>◇3日◇札幌ドーム

 小さな鉄腕が、大きな節目に到達した。日本ハム武田久投手(29)が、プロ入り通算200試合登板となった楽天戦を勝利に導いた。ホールド、セーブの記録がつかない9回12-5の場面から5番手として登板。1安打を浴びたが無失点で切り抜け、乱戦での5連勝を締めた。パ・リーグ最多18試合目のマウンドが、ここ3年間フル稼働を続けるセットアッパーの記念日になった。

 静かに、仕事を終えた。武田久が簡単に3つのアウトをいつものように積み上げた。4万観衆が大勝に酔いしれた一戦。プロ6年目で、踏みしめたマウンドの数はこの日でついに「200」の大台に乗った。中継ぎの証しともいえる、ホールド、セーブもつかない場面。「行けって言われたんで、行っただけ」。いつも通り涼しげに、また1試合、1勝に欠かせない歯車になった。

 今季18試合目のマウンドは、この日時点でリーグトップ。シーズン72試合のハイペースを刻んでいる。06年は75試合、昨季は64試合に登板。セットアッパーとして、2年連続リーグ制覇には欠かせないピースの1つになった。日本ハムでは前人未到の3年連続60試合以上登板が射程圏に入るほど、今季もフル稼働中だ。12-5という大味な試合。梨田監督は「ファンの人を引きつける意味でも良かったね」とジョーク交じりで起用理由を説明したが、思いがけない記念日になった。

 おとこ気が、小さな体での強気な投球スタイルに凝縮されている。実は昨季中盤以降、右ひじ痛が発症した。優勝争いのさなか、チーム内でもごく一部にしか明かさず、弱みを見せずに右腕を振り続けた。発熱効果のあるクリームを塗るなど試行錯誤しながら克服に努めたが、画期的な効果はなし。痛みを抱えながらポストシーズンを戦い抜いた。最終的に代表から漏れたが、星野ジャパン候補の一員としての長いシーズンをまっとうした。

 チーム打率はいまだリーグワーストながら、この日で貯金は今季最多の5に膨らんだ。2勝9ホールド。ダルビッシュら派手なスターの陰で、2位キープの現状を支える欠かせない1人だ。この日も2死からリックに二塁打は浴びたが、フェルナンデスは二ゴロに抑えた。「ちょっと打たれてしまいましたね。まあ、いいですけど」。大乱戦の中で、170センチの鉄腕は渋く、通過点でもある節目に立った。【高山通史】