<中日3-2阪神>◇4日◇ナゴヤドーム

 先発岩田が粘りに粘って6回無失点に抑えたのに、久保田がゲームをつぶしてしまった。快勝ペースの中日戦は8回裏にセットアッパー久保田が同点に追いつかれて暗転。今季2度目の延長戦で10回裏につぎ込んだストッパー藤川が、プロ入り初のサヨナラ本塁打を李炳圭に浴びてしまった。金本タイムリー、鳥谷アーチなど勝ちパターンの要素がたっぷりのゲームを盤石のリリーフ陣で落とし、2位中日に1・5ゲーム差と再び接近を許した。

 クルリと空を切るはずの李炳圭のバットに、白球が当たってしまった。まさか、サヨナラ…。左翼への飛球がフェンスの奥に消えるのを見て、藤川球児も目が点になった。イメージし難い一発を浴びて、今カードの勝ち越しや今季最多の貯金13などはすべてお預けとなった。

 「うまいこと打たれた感じです。引きずることもない。こういうこともあるのだけど、迷惑をかけてしまったので頑張らないと」

 落ち込んでいられなかった。被弾は昨年10月1日の横浜村田以来で、今季初。サヨナラで敗戦投手になるのも昨年9月25日横浜戦以来で、今シーズンは初めてのことだった。

 打順の巡り合わせもあり、同点の10回裏に登板した。4番ウッズ、5番和田を退け、この日再三のチャンスで凡退していた李炳圭もカウント2-1とあっさり追い込んだ。決めにいった外角フォークを運ばれて、あっけない結末を迎えた。

 「球児が打たれたらしゃあない。まだこの時期だし、2イニングいかせるつもりはなかったけどな。まあ8回やんか。久保田も連投、連投でやっているわけと違うのにな」

 岡田監督は少しの悔いを残しながら振り返った。先発岩田は6回無失点。2回から5回まで毎回得点圏に走者を置きながら粘った。7回を渡辺が抑え、2点差で久保田投入なら勝利確率は急上昇…のところで鉄板のシナリオが崩れた。

 先頭ウッズに右前打、和田の右中間二塁打でピンチを広げ、中村紀に同点二塁打を中堅フェンスにぶつけられた。打者4人で2点を返され、リードをフイにした。久保田は「何とか…」と話すのが精いっぱい。「したかった」の言葉さえも口にできなかった。

 このナゴヤドームで12回延長引き分けを演じたのが4月24日のこと。久保田はおきて破りの4イニングを抑える熱投でドラ打線に立ちはだかった。ウィリアムスは2軍調整中。JFKが結成された05年以来、藤川と久保田の2人がそろって失点するのはこれでたったの4度目。他の3投手が無失点というきわめて珍しいケースでの敗戦は、誰もが「しゃあない」と割り切るしかなかった。【町田達彦】