<中日3-2阪神>◇4日◇ナゴヤドーム

 中日が今季初のサヨナラ勝ちで首位阪神を破り、ゲーム差を再び1・5に縮めた。悩める助っ人・李炳圭外野手(33)が延長10回、阪神藤川から左翼へ来日初のサヨナラ弾をたたき込んだ。先発吉見が7回6安打2失点と粘り、8回に中村紀が同点二塁打を放ち、同点の9回に守護神岩瀬が登板する総力戦。延長10回を3人で抑えた4番手チェンが2勝目をマークした。

 李が藤川のフォークを打ち砕いた。延長10回2死走者なし。サヨナラ4号ソロが左翼フェンスをわずかに越えた。飛び上がりながらベースを回った李は、ホームベースを囲んで待つナインの輪に助走をつけて飛び込んだ。歓声と祝福のパンチが、雨、あられと降ってきた。ウッズに腰を引きずられ、デラロサに背中を殴られた。来日初のサヨナラ弾。お立ち台でも笑顔をはじけさせた。

 「ずっと打てなかった。最後でいい姿を見せられてよかった。藤川?

 何とかして勝ちたかった。ファンの皆さんの前で打てて光栄です。日本語で何か?

 イショケ、ガンバリマス」。

 重苦しい展開だった。打線が初対戦となる阪神岩田に苦しめられ、6回までゼロ行進。7回は2番手渡辺にひねられ、0-2で8回から久保田→藤川とつなぐ必勝態勢に持ち込まれた。首位阪神に連敗すればゲーム差は今季最大の3・5に開く。3日は今季ワーストの16被安打、9失点で敗れており、流れを変えたかったがままならない。8回に中村紀が同点二塁打を放ち、かろうじて延長戦に持ち込んでいた。

 李には意地があった。2年目。「韓国のイチロー」のふれこみで来日した昨年は打率2割6分2厘、9本塁打と期待外れに終わった。キャンプで若手顔負けの猛練習をこなし3番で開幕を迎えたが、3日から6番に降格されていた。「打順は気にしていない」と話したが、2割3分台の低打率に甘んじるわけにはいかなかった。

 燃える材料もあった。北京五輪の韓国代表1次選考に漏れたが、このほど発表された2次選考で候補入り。選ばれたり、選ばれなかったりの状況にあきれていた。最終的に選ばれても、出場するか決めていない。中日打線に穴を開けたくない気持ちもある。「五輪に関しては自分からどうこう言うつもりはない」。代表チームへの無関心を装ったのは、プライドだった。

 今季初のサヨナラ勝ちを見届けた落合監督は、苦笑いで会見場に現れた。「誰が(流れを)関所で止めてんだろ。だれか手形、渡してくれや。形としてはサヨナラホームランが出て、むこうにダメージがあるかないかは別にして…」。李をほめあげるより、チャンスをつぶし同点で岩瀬を投入せざるを得なくなった展開を皮肉った。【村野

 森】