<西武8-6日本ハム>◇5日◇西武ドーム

 西武が日本ハムとの首位攻防戦で6点差を大逆転勝ちした。0-6の5回、細川亨捕手(28)が放った5号満塁弾を合図に、6回に5試合ぶりに復帰した中島裕之内野手(25)の8号ソロで1点差。8回に、ブラゼル内野手(27)の同点適時打、G・G・佐藤外野手(29)の9号2ランで勝ち越した。8得点のうち、7点が本塁打。今季最多3万4783人を集めた西武ドームを熱狂させ、2位日本ハムとは3ゲーム差とした。

 絶望的な6点差も、今の西武には関係なかった。日本ハム・スウィーニーの前に静まり返っていた打線が、5回に眠りから覚める。2安打と四球で無死満塁。細川は曲がり切らないカットボールをたたき、バットを高く放り上げた。左越えに運ぶグランドスラムが、大逆転の幕開けだった。

 左ひざ痛で5試合ぶりの復帰戦となった中島が続いた。6回、5球ファウルで粘った9球目だ。体に近い内角高めのボール球に、反射的に反応。中島らしい野性的スイングで左越えに8号ソロをたたき込んだ。痛み止めを飲んだ試合前に「走るとまだ痛むけど、ホームランを打てば歩いて戻れるからね」と話していた通り、悠々とベースを周回し、1点差だ。

 仕上げは8回。2死二塁で、武田久からブラゼルが中前にしぶとく落とす同点打。直後の初球、G・G・佐藤が豪快に振り抜き、バックスクリーン右に2ラン。ドラマが完結した。「ブラゼルはどん詰まりだけど、相手にはショックが大きい。投手の気持ちが整理できていない時の初球。GG(佐藤)は配球を読むのがうまい。こういうゲームを取れたのは大きい」。投手出身の渡辺監督もうなるしかなかった。

 6点差をはね返したヒーロー4人がお立ち台に上がり、最後は決勝9号2ランを放ったG・G・佐藤の出番だった。「こどもの日

 子供たちよ

 夢を現実に

 ホームランに夢を乗せて

 鯉のぼり

 キモティー!」。最後はお決まりのフレーズを絶叫し、スタンドを大爆笑させた。ウエートトレーニングをこよなく愛する男の体は、さらにパワーアップ。昨年まで使用していたカブレラと同サイズの3XLのユニホームがきつくなり、4XLに変えたほどだ。

 こどもの日、西武ドームには今季最多3万4783人が集まった。家族が観戦していた細川は「こどもの日に、打ててうれしい」とプロ3本目の満塁弾に胸を張った。何かが起きる今年の西武ミラクル劇場。1発攻勢による6点差の大逆転を目の当たりにした子供たちには、ゴールデンウイークの忘れられない思い出として胸に刻まれたはずだ。【柴田猛夫】