<巨人4-8阪神>◇6日◇東京ドーム

 ゴールデンウイーク最終日、阪神ファンで埋まった東京ドームの左翼席から壮大な音量のコールがわき起こる。三塁の守備位置で、今岡はグラブを掲げてその声に応えた。「結果を出したいという気持ちは日ごろより強い」という今岡が、その結果を鮮やかに出した。ファンの声援が心地よかった。

 2回だ。先頭で打席に立ち、巨人先発の高橋尚を打ち砕いた。フルカウントから2球粘った8球目、スライダーを左中間席に突き刺した。先制の2号ソロは4月4日巨人戦以来、25試合ぶりとなる1発だ。1号も同じ高橋尚だった。相性のいい相手から、その後の猛攻撃へとつなげる大きな1発だった。

 5番三塁で、10試合ぶりにスタメン復帰した。開幕から不振に苦しみ、打率は1割台。「実力がないと言わざるを得ない」。快進撃を続けるチームの中、弱気発言もあった。そんな心にムチを打った。「調子がいい、悪いじゃなく、前を向いていこうと考えている。マイナス思考になれば疲れるし、体が動かなくなるでしょ?」。気持ちの切り替えが結果につながった。

 開き直る-。それは今季のテーマでもあった。03年の首位打者、05年の打点王の低迷が続いた。今春、沖縄宜野座にはプライドをかなぐり捨てた今岡がいた。2月上旬。今岡は野原に声をかけた。「今日は飛ぶで!」。野原は驚いた。10代の若手とともに、特守で泥にまみれる宣言だった。今季にかける思いが、そこにあった。

 「汚い当たりでも点が入ればいい」。若手のように、がむしゃらに結果を欲する。その姿勢は、本塁打の次の打席でも変わらなかった。1-1と同点に追いつかれた直後の4回無死二、三塁。高橋尚の141キロ外角球を、強振せず丁寧にミート。すぐに突き放す中犠飛を放った。今季初となる1試合2打点。かつての勝負強さの片りんを披露し、復活の気配も漂い始めた。

 岡田監督も「ヒットの方がいいけど最低限の仕事をしてくれた」と犠飛を評価。帰ってきた5番にホオを緩めた。連夜の爆発を見せた猛虎打線。そこに今岡が加われば、これ以上頼もしいことはない。【佐井陽介】