<日本ハム1-0中日>◇23日◇札幌ドーム

 エースが1球に泣いた。中日は昨年の日本シリーズの相手・日本ハムとの交流戦でエース川上憲伸投手(32)が先発。8回3安打と今季1番の内容だったが、2回に浴びたソロ1発に泣いて0ー1で敗れ、交流戦両リーグトップの通算12勝目はならなかった。打線は4安打無得点。走塁ミスも多発して中日らしからぬ敗戦だった。阪神が敗れたため、首位とのゲーム差は3・5のまま。

 中日川上は赤いグラブをつけてベンチ前に出た。0-1の9回表1死一塁。すでに105球を投げていたが、味方が同点に追いつくことを信じて9回裏の投球に備えた。中村紀の投ゴロでの試合終了を見届けると、静かにベンチに下がった。

 「稲葉さんにうまく打たれた。カットボールが全体的に腕が振れていなかった」

 1球に泣いた。2回先頭の稲葉への5球目。カウント2-1から内角低めに141キロのカットボールを投じた。だがうまく腕をたたんだ稲葉に右翼ポール際に運ばれた。稲葉への1球以外はほぼ完ぺきな投球で8回を投げて3安打1失点。しかし好投は報われずに3敗目を喫した。

 それでも収穫はあった。これまではコントロール重視のためにランナーがいなくてもセットポジションだった。だが前回登板の15日ヤクルト戦は初回5失点を喫して「(この結果を)気にしないといけない」と反省。中7日の間に試行錯誤を繰り返し、この日は今季初めてのワインドアップで投げた。結果はストレートが常時145キロ前後を記録して、最速も149キロをマーク。川上は「昔のフォームに戻しただけ」と話したが、エース本来の剛球復活を印象づける圧巻の投球につながった。

 打線の援護に恵まれず、両リーグ単独トップの交流戦通算12勝目はおあずけになった。勝敗も2勝3敗と黒星先行となった。ただ札幌ドームをあとにするエースの背中に、悲壮感はなかった。【益田一弘】