<阪神4-3オリックス>◇8日◇甲子園

 阪神の貯金が早くも20の大台に乗った。3-3の同点で迎えた7回、赤星憲広外野手(32)がオリックス本柳から勝ち越しの中前打を放った。8回から久保田、藤川の救援陣が無失点に抑えて逃げ切った。60試合未満での貯金20はセ・リーグでは星野監督が率いて優勝した03年阪神以来5年ぶりで、2位中日とのゲーム差も7・5にまで広げた。

 緊迫した空気を、弾丸ライナーが切り裂いた。オリックス本柳の頭上数十センチを通過した打球が、センターに抜けた。赤星は右手でガッツポースを繰り返した。「すごい打球だったね。自分でもびっくり。1対1の勝負ぐらいの気持ちで打席に入った。考えると力んでしまうので、余計なことは考えず無心でした」。先制し、逆転され、同点に追いついて迎えた7回2死三塁。カウント2-2から3球ファウルで粘り、フルカウントに持ち込んでからの9球目の内角低め141キロ直球を完ぺきにミートした。

 快進撃を支えるリードオフマンは決して万全の状態ではない。5月26日西武戦(甲子園)の試合前だった。「(前日まで)2日間で3時間しか寝られなかった。自分の足が自分じゃないみたいだった…」。23日のナイター後、24日から2日連続でデーゲーム。25日西武戦で今季初失策し、捕球時に足を滑らす場面もあった。満身創痍(そうい)の状態で試合に臨んでいる。

 それでも結果を残す。岡田監督は「ランナーを置いたところでのバッティングが目立つよな」と、その勝負強さに舌を巻いた。これで交流戦3度目の決勝打。すべて“苦手”なはずのデーゲームの一打だ。「素直に言えばボーッとしている。(デーゲームでは)集中力が散漫になりがちだから、いつも以上に集中しようと思うのかも」。本人も驚く底力でチームをけん引している。

 これで4連勝。21度目の逆転勝ちで、貯金も20とした。選手会長はチーム状態の良さに自信を見せた。「逆転されても何とかなる。6回、追いついた時にいけると思いました。お金もそうですけど、貯金はいくらあってもいい」。60試合未満で貯金20のセ・リーグのチームは過去14あり、13チームが優勝している。【佐井陽介】