<広島1-3楽天>◇22日◇広島

 マーくんが1日限りのストッパーで初セーブ-。楽天田中将大投手(19)が7回から2番手として登板。3回1安打無失点の好投で、プロ初救援で初セーブを挙げた。先発岩隈との豪華リレーも実現し、チーム史上初の交流戦勝ち越しを決めた。北京五輪では中継ぎとしても候補に挙がる田中が、新たな可能性も見せた。

 ブルペンからマウンドへ向かうまでに、気持ちも体もピークに達していた。プロ初救援に田中は「最初から全開でした」と、未体験の興奮を振り返った。7回は雄たけび、8回はジャンプ。そして9回は小さくも力強いガッツポーズ。3イニングすべてで、最後の打者を打ち取る度に気合があふれ出た。プロ初体験の39球1安打3奪三振。1日限りの守護神は全球フルスロットルで抑え込んだ。

 球場の興奮を自らの力に変えた。2点差で迎えた終盤。満員の広島市民球場もボルテージが最高潮に達していた。「いつもは(先発なので)応援も尻上がり。でも今日はいきなり盛り上がっているところに出て行ったので、全然違いました」。だが、田中の強心臓は代打攻勢で一層盛り上がる広島ファンの声にも動じなかった。

 登板前には「8回か9回に行くと言われてたので、ビックリしました。まだブルペンで(準備を)始めたばっかりだったので」とドタバタがあったが、そこは「燃えましたよ」と気迫で状態を一気に上げた。

 プロ入り後は先発1本だが、高校時代には経験がある。高校3年夏の甲子園大会後に行われた日米高校野球ではリリーフエースを任され、チームで唯一全5試合に登板した。「向いてる?

 どうなんでしょうね」とはぐらかしたが、ここ一番の勝負どころでもひるまない強い精神力は、新たな才能の開花も予感させる。野村監督は「必勝パターン。岩隈と田中で負けるわけにいかんからな。交流戦ならではだよ。明日は田中、岩隈で行くか」とご機嫌だった。

 先発2本柱の共演でチームは史上初の交流戦勝ち越しを決めた。野村監督は「(優勝して)5000万円欲しかったな。お金とは縁がないわ」と言いつつ、白星を重ねたチームに表情は柔らかかった。

 帰り際、北京五輪での中継ぎ登板について聞かれた田中は「そういうのはやめてください。ないですよ」と笑顔で返した。次回からは本来の先発に戻る。それでもマーくんの新たな可能性は、金メダルを目指す日本代表の新たな光であることに違いはない。【小松正明】