<広島1-6巨人>◇29日◇広島

 北京五輪の最終代表候補でもある巨人上原浩治投手(33)が、マウンドに戻って来た。29日、広島12回戦(広島)の9回、5点リードの展開でリリーフとして登板。わずか11球、3者凡退で切り抜けた。4月26日の阪神戦(甲子園)で4敗目を喫してから再調整を続けてきた。エースの約2カ月ぶりの戦列復帰が、終盤の集中打で勝利したチームの白星にさらなる価値を持たせた。

 大差がつき、帰ろうとしていた広島ファンも動きを止めた。席に座り直しグラウンドを指さす。そこにはリリーフカーでマウンドを目指す上原の姿があった。2カ月遠ざかっていた実戦のマウンド。味方だけでなく相手ファンの目もくぎ付けにしてみせた。

 直球で押した。初球から6球続けた。先頭前田智を遊撃へのポップフライに仕留めると、シーボルも最後は直球を詰まらせて二ゴロ。3人目の倉も二塁への力ないフライ。なかなか見られなかったマウンドに君臨する背番号19の姿があった。今季初めて登板試合でチームが勝利し、仲間とハイタッチをかわした。

 上原

 ファンの声援がすごかった?

 ファンどうこうでなく、もうやるしかないからね。自分のことで精いっぱいだよ。

 巨人だけでなく、北京五輪で日本代表の命運を握る男だとファンも感じているからこそ、敵味方関係なく声援が飛んだ。

 開幕からのつらい3カ月だった。生まれて初めて投げ方が分からなくなっていた。それまでは、フォームを崩して投げられなくなるという別の投手たちの話を「ありえないと思っていた」という。ところが、野球人生で初めてそういう事態に陥った。脱出法が分からなかった。一から調整をやり直し、なんとかこの日の復活にたどりついた。

 本来なら先発としての復帰を目指すところだが、今後もリリーフを続ける。五輪での起用法がクローザーと明言されてしまっている以上、先発の調整をしても中途半端になってしまう。原監督の配慮が、こういう形での復活となった。

 上原

 1試合だけじゃ分からないよ。点差もあったし、打者も死ぬ気ではない。競ってる時にどんな投球ができるかだね。

 慎重な姿勢は崩さなかったが、表情には、ようやくチームに貢献できるという充実感があった。

 原監督も、もちろんエースの復活を喜んだ。「躍動感があったね。いいスタートを切れたんじゃないか。ヒサ(高橋尚)と2人、役割は違うけど、帰ってきたのは大きいね」。負ければ再び借金1で4位転落の危機を逃れた。その事実以上に、頼れる男の復活がチームを勇気づけた。【竹内智信】