<巨人7-5ヤクルト>◇2日◇東京ドーム

 上原が傷だらけの初勝利を挙げた。ファーム調整から復帰した巨人の上原浩治投手(33)がヤクルト戦の7回から2イニングを投げて6安打、3失点で勝ち越しを許したが、8回に古城茂幸内野手(32)の決勝2ランなどで勝利投手が転がり込んだ。4点リードの場面で登板した復帰初戦の6月29日広島戦では3者凡退で復活を予感させたが、2戦目のこの日はフォークが落ちきらずに甘くなるなどリーグ戦だけでなく8月の北京五輪にも不安を残した。

 上原に今季初勝利の喜びは感じられなかった。クルーンがウイニングボールを渡してきたが「ファンにあげてくれ」と断った。球場を引き揚げる際には「苦しいね。もがいてなんとかしないと。1勝?

 うーん、頑張ります」と、自分を見つめ直すように話した。

 内容は負けに等しかった。7回、同点の場面でマウンドに登った。復帰後初の東京ドーム。すさまじい歓声と上原コールに後押しされた。しかし、いきなりウィルソンに二塁打を打たれると、宮本の中前打で1点を失った。素手でつかもうとする執念も見せたが、気持ちは空回りする。味方が同点に追いついてくれた後の8回には連打を浴び、失策も絡んで2点を失った。

 本来の上原ではなかった。速球はシュート回転し、制球も全体的に高め。フォークは2球しか空振りが取れなかった。1イニング目には144キロ出ていた速球が、2イニング目には140キロに届かなくなった。ファームでの2カ月間の再調整で培ったことをこの日は発揮できなかった。

 テレビのインタビューでは北京五輪に出たい意向を示しているが、この日の内容を見る限りでは、それどころではない。巨人の選手である上原がやらなければいけないのは、まずチームに貢献できる状態に自分を戻すこと。その後で五輪代表に選ばれればいい。先発で失敗し、先発での復帰を目指していた中で、星野監督からクローザーとして五輪候補に選ばれた。結果も出してない中での選出は、上原の焦りや後ろめたさにつながった。

 原監督は上原について2イニング投げさせたことを聞かれると「彼は…」と口ごもった後「本心を語るのは今はやめておきましょう」と言葉をのみ込んだ。先発調整していた上原を五輪のために中継ぎ調整させる矛盾は、原監督が口にすることではない。そのうえで「久しぶりの東京ドームで、大きな歓声の中、緊張もあったんでしょう。幸い、負けではなく、勝ち星がついた。この次のウエに期待しましょう」と話した。白星が上原の薬になることを願うしかない。【竹内智信】