<広島12-11ヤクルト>◇4日◇呉

 これが底力じゃ!

 広島が8回に5点差を跳ね返す豪快な逆転劇で、ヤクルトを撃破した。死球をはさんで7連続安打を浴びせ、一挙に7得点。ヤクルトの必勝リレーを粉々に打ち砕いた。打ちも打ったり今季最多の20安打。赤ヘルの驚異の粘りは後半戦も健在だった。この試合同様、ペナントレースも何が起きてもおかしくない。さあ、逆襲だ。カープの8月が熱くなる。

 夜空に吸い込まれるように、代打前田智徳外野手(37)の打球は高々と舞い上がり、芝生ではずんでフェンスを越えた。エンタイトル二塁打。三塁走者の石原が労せず生還した。ついに逆転だ。呉二河球場を埋めた観衆が思い描いた光景が現実となった。

 赤い戦士が次々とホームベースを駆け抜けた。連打、連打で1点、2点、3点…。優雅に舞っていたツバメのしっぽに手をかけ、そして打ち落とした。勝ち越し打の前田智は「相手が勝ちパターンだったところを、みんなが自分の打撃をして、力を出し切ったということ」と満足そうだ。

 5-10で迎えた8回。ヤクルトは必勝リレーの押本を投入。その右腕に赤ヘル打線が襲いかかった。先頭天谷が左前に運び導火線に火を付ける。「とにかく出塁しようと思った」。

 止まらない。アレックス、栗原、嶋と4連打。シーボルの死球をはさんで石原が打ち、小窪が代わった守護神林昌勇のスライダーを右前に運ぶ同点の適時打。小窪は「無我夢中。皆さんのおかげです。右方向への意識はあった」と息をはずませた。前田智の決勝打のあとには東出がスクイズ。12-10。8回のスコアボードに「7」の数字が誇らしげに浮かび上がった。

 ブラウン監督は「どんなに点差があっても集中力を切らさなかった。自分の一振りで決めるのではなく、後ろにつなぐ気持ちがこういう結果になった」と誇らしげ。負ければ借金8。目の前を飛ぶツバメにこれ以上の後れは許されない。執念、気迫、底力。これは赤ヘルナインからのメッセージだ。「戦いはこれからだ」-。コイが8月戦線の主役になる。【柏原誠】