<西武7-10楽天>◇23日◇西武ドーム

 西武が優勝まであと2人から大逆転負けを喫した。楽天戦は2-5の8回裏に4番に抜てきされた後藤武敏内野手(28)が逆転適時二塁打を放ち、一気に優勝ムードが高まったが、9回、守護神グラマンが楽天フェルナンデスにまさかの満塁弾を浴びた。これがVのプレッシャーか。だが2位オリックスが敗れたため、優勝マジックは1。三度目の正直での本拠地胴上げをかけて、24日のロッテ戦に挑む。

 目に見えない重圧が、西武ナインに襲いかかった。8回に5点を奪い、大逆転して2点リードで迎えた9回。先頭打者の遊ゴロは、中島の送球がわずかにそれて内野安打。中村は高いバウンドの三ゴロをファンブルして失策した。1死満塁となり、さらには防御率0点台の絶対的守護神グラマンが押し出し四球。そしてフェルナンデスに満塁弾を浴びてしまう。あと1イニングを抑えれば胴上げという場面で、ナインの動きに少しずつ乱れが生じていた。

 渡辺監督は誰を責めるわけでもなく、穏やかな表情で言った。「若いチームが経験したことがない優勝争いで、今日はマイナスの面が出たということ。こういう試合を1つ1つ戦っていけば、強くなれる」。駆けつけた3万3000人を超す満員の観衆からはため息が漏れたが、指揮官は若きナインが大舞台でしか味わえない経験ができたことを、前向きにとらえた。

 逆転に次ぐ逆転で最後は泣いたが、あきらめない粘りは今年の西武野球そのものだった。逆転の流れは、大沼の力投がつくった。先発平野が崩れた後、2番手で4回2/3を1安打無失点に抑え、試合をつくり直した。2日前に61歳の父幸郎さんが病気で亡くなった。この日が告別式だった。「投げた方が供養になるから、しっかり野球をやってこいと家族に言われました。オヤジのために投げました」。力投は、チームにも勇気を与えた。

 マジック1となり、あと1勝すれば自力で優勝できる。足踏みした渡辺監督は「気持ちの中では今日決めたかったけど、営業的にはいいんじゃない?」と本拠地でもう1試合できることをあえてネタにした。指揮官の明るさで、優勝への試練を乗り越える。【柴田猛夫】