<オリックス4-1ソフトバンク>◇1日◇京セラドーム大阪

 8回1死。清原の現役最終打席も直球勝負だった。ソフトバンク杉内俊哉投手(27)はカウント2-2から1球ファウルされたあと、真ん中高めの139キロで空を切らせた。打席を外した清原がヘルメットを脱いで頭を下げ、何かを口にした。歓声がこだまし、集中しにくいムードだったが、ローズをスライダーで空振りに仕留めた。7回1死から5者連続、今季最多の13奪三振で難しい試合を1人で投げ抜いた。

 清原には4打席、18球すべて直球だった。6回は適時打を許し、皮肉にも引退試合を盛り上げた。王監督は「こういう試合で変化球が投げにくい雰囲気だったんじゃないかな」とかばったが、杉内は「(直球勝負で)いこうと思っていたからね」とさらり。黒星がついたが、注目度の高い、完全アウェー戦で毎回三振を奪う意地をみせた。

 最下位のチームで1人、希望の光をともした。これで今季通算202奪三振と3年ぶりに大台を突破し、全日程が終了した日本ハムダルビッシュのリーグ最多「208」に6差と迫った。ソフトバンクは5日から楽天3連戦を残し、杉本投手コーチは杉内が登板する可能性を示唆。自身初となる奪三振王のタイトルに手の届く位置につけた。

 入団年の02年3月2日のオープン戦。“デビュー”戦だった杉内がプロ被弾したのが、巨人清原だった。あれから6年7カ月。清原の最終打席のボールは1度清原の手に渡ったが、球場を離れる直前、関係者を通じて杉内の手元に戻ってきた。そこには黒いペンで「杉内へ

 最高の球をありがとう

 清原和博」と書き込まれていた。空振り三振の直後、清原がつぶやいたひと言だったかもしれない。

 強烈なメッセージを受け取った杉内は「最高やった」と少しだけ笑った。今季最終登板でタイトルをつかみ、その思いに報いてみせる。【押谷謙爾】