<CS第2ステージ:西武4-7日本ハム>◇第3戦◇19日◇西武ドーム

 170センチの小さな体を豪快にひねり、珍しく右手でガッツポーズをつくった。6回無死一、二塁のピンチ。西武反撃ムードの中でマウンドに上がった日本ハム武田久が、犠飛による1点に抑えた。「(ガッツポーズは)気合が入ってたんでしょうね。ストライク先行でいけたし、まっすぐでタイミングを外せたのは久しぶり」。敵地スタンドを意気消沈させた。

 勝敗を分けるターニングポイントだった。2番手多田野が2四死球で1死も取れずに降板。3点リードの余裕が消えかけた。だが「1点くらいやってもしょうがない」。19球中17球を直球系で押し、2イニングを打者6人で料理。嫌な流れを断ち切った。

 3年連続で60試合以上に登板。蓄積された疲労が体をむしばんでいた。8月以降の防御率は9・39。中継ぎエースからの配置転換もあった。衝撃だったのが8月12日西武戦。2点リードの8回から登板し、江藤に3ランを浴びるなど5失点で試合を壊した。舞台はこの日と同じ西武ドームだった。自宅に帰っても、布団に入って目をつぶれば悪夢がフラッシュバックした。翌日は早朝に札幌へ移動。一睡もできずに空港へと向かった。

 厚沢投手コーチは「悩んでいた時期が長かった」と振り返る。だが「話せば言い訳になる」と、弱音を吐くことは1度もなかった。「フォームも少し修正しています。やっていることがはまってきているかな」。屈辱を味わった、同じ場所で、復調への手応えをつかんだ。

 苦悩を乗り越えた同僚の気迫のピッチングに、建山も応えた。「(久が)いい投球をしていたので気合が入った。無難に抑えられました」。8回を無失点でピシャリ。9回はマイケルが締めた。投手力を中心とした日本ハム野球の、盤石リレーが復活した。

 心強い救援陣は残り試合の大きな武器になる。武田久は言った。「次です。これで五分になっただけ」。フル回転する準備はできている。【本間翼】