<セCS第1ステージ:阪神0-2中日>◇第3戦◇20日◇京セラドーム大阪

 中日が阪神との接戦を制し、クライマックスシリーズ(CS)第1ステージを2勝1敗で突破した。0-0の9回、4番タイロン・ウッズ内野手(39)が阪神藤川球児投手(28)の150キロ直球を左中間へ決勝2ランを放ち、決めた。

 迷いはなかった。ウッズは藤川の直球だけを待っていた。0-0の9回2死三塁、フルカウントからの6球目。「彼はベストピッチャー。最も自信があるボール以外を投げて打たれると悔いが残る男とわかっていた」。読み通りだった。150キロの直球にフルスイングで応えた。左中間への135メートルの決勝2ラン。沈黙した球場でベースをゆっくりと1周した。

 「打った瞬間、入る感触だった。信じられないようなベストゲームだ」とまくし立てた。シーズンは得点圏打率2割2分7厘と低迷して、打点77は来日6年目でワースト。終盤には5番に降格した。打てないストレスから、頭頂部に直径約3センチの丸い脱毛もできていた。関係者は「年俸を6億円(推定)もらっていても悩みはあるんですね」とウッズを気遣っていた。そんな苦悩も不振も吹き飛ばす「球児撃ち」だった。

 緊迫の投手戦は8回まで0-0、岩田にわずか1安打に抑えられた。CSのルールでは引き分けは2位阪神が第2S進出。守護神藤川がマウンドに立った9回、指揮官が動いた。小池の代打立浪が、中前打。荒木の犠打、藤川の暴投で1死三塁と追いつめた。続く森野は凡退したが、ウッズが豪快弾で決めた。落合監督は2人の対決に「見応えがあったでしょう。抑えのエースと4番の対決。打つ、打たないは別としてこれが野球の醍醐味(だいごみ)」と賛辞を送った。

 22日からリーグ王者巨人との第2Sを迎える。ウッズは「次も苦しいタフなゲームになるだろう。巨人はとても強いが、勝ちたい」。3位からの逆襲を狙うオレ竜が、東京に乗り込む。【益田一弘】