<日本シリーズ:巨人3-2西武>◇第2戦◇2日◇東京ドーム

 巨人が劇的なサヨナラ勝利で1勝1敗のタイに持ち込んだ。2-2の9回、アレックス・ラミレス外野手(34)が日本シリーズ史上12人目のサヨナラ弾をバックスクリーン左へ放った。ここまで8打数1安打と不調だったが、ひと振りで試合を決めた。先発高橋尚成投手(33)は6回途中2失点。後を受けた西村健太朗投手(23)、越智大祐投手(25)の若手救援陣が踏ん張って劇的な幕切れを呼び込んだ。3日は休養日で、4日の第3戦からは西武ドームに舞台を移して行われる。

 打った瞬間、右腕を突き上げていた。劇的なサヨナラ弾。大歓声がダイヤモンドを走るラミレスを後押しする。三塁ベースを回って見えた光景は「これまでの人生でも一番」だった。ナイン全員が待ちかまえるホームに、ヘルメットを脱ぎ捨てて飛び込んだ。体をたたかれ、手荒い祝福から逃げるように脱出すると、原監督と抱き合った。期待にこたえられた充実感が、勝利の喜びとともにわき上がった。

 お立ち台では「シンジラレナ~イ」と日本ハムのヒルマン元監督をまねして笑いをとったが、まさに信じられない対応力だ。この日は4打席目までは打ち損じが多く外野に飛ばすこともできなかった。7回の攻撃前に、篠塚打撃コーチから「引っ張りすぎている。もう少しセンターから右方向へ打つイメージでいったらどうか」とアドバイスを受けた。ナーバスになっていた気持ちを切り替えた。「次のワンスイングで仕留められると思って打席に入った」。2球目の外角スライダーを逃さなかった。「相手がすごく研究してきてるのは感じるけど、メンタルを変えて対応したい」と頼もしかった。

 この日本シリーズ前、WBCの日本代表監督就任が決まった原監督へ言葉をかけた。日本シリーズ優勝チームが進むアジアシリーズと、WBCのアジア予選とを混同していたラミレスは「自分がアジアシリーズで頑張れば、原さんを助けることができるのか?」と真剣に話した。勘違いではあったが、それほど力になりたい思いを抱いていた。原監督も笑顔を返し、その気持ちを受け取った。

 この日は日曜日。球場に来る前には、いつも通りに東京・渋谷区内にある教会でミサに参加した。シーズン中の日曜日と同じように平常心で試合に臨めた。そこにも原監督の配慮がある。チームは球場に隣接するホテルに合宿中だが、特別に自宅から通うことを許可してくれたからだ。勝ちたい、打ちたいという思いがあふれるのも自然だった。

 原監督は「ベーブ・ルースだってストライクゾーンにない球を打てば確率は悪くなる。うまく攻められていた」とメジャーの歴史的な大打者を引き合いに出した上で、「ラミちゃんが打って決まったのは、チームにとっても彼にとっても大きい。これからガンガン打ってくれると思う」と絶賛した。レギュラーシーズンもクライマックスシリーズも逆転で勝った。日本一も逆転で勝ち取る。【竹内智信】