手痛い「1発」の代償は高かった。日本ハムの主力選手の契約更改が26日、札幌市内の球団事務所でスタート。左腕エース武田勝投手(30)が8勝を挙げながらも900万円の大幅減、年俸7600万円でサインした。4月に先発予定だった試合前練習中に不注意から打球が左手親指に直撃して登板回避。約2カ月間戦列を離れた骨折が公傷と認定されず、厳しい評価を下された。

 グラウンド上で起きた不慮の「事故」ではなく、自らに要因がある「人災」として処理された。武田勝が、目の前に示された数字を素直に受け入れた。昨季の9勝には及ばないが、8勝。20試合に登板し防御率も入団から3年連続の2点台、2・96。「1年を通して仕事ができなかった。自分の不注意、ときつく言われた」。プロ初のダウンでも一発サインした理由を、淡々と明らかにした。

 4月29日ロッテ戦。予告先発されていたが、悪夢は相手チームの練習中に外野をランニング中に起きた。ベニーのフリー打撃中の打球が、左手に直撃。当日の先発を回避し、翌30日には左親指末節骨の骨折で出場選手登録を抹消された。中継ぎと併用されたこれまで2年間と違い、先発専任と大役を託されたシーズン序盤で約2カ月間、戦列を離れることになった。

 試合前という点、注意していれば防げたなどという観点から、公傷ではないと球団は判断した。島田チーム統轄本部長は「ケガにも防げるケガと防げないケガがある」と説明。明らかに“後者”であるとの見方から、下された結論だった。昨季は期待料込みで5700万円の大幅増だったことからの大幅減。それは「一撃900万円」という数字に反映されていた。

 発奮材料ともとれる、厳しいオフ。武田勝は「まず投げる前に外野を走らない」とジョーク交じりに来季の抱負を明かしたが、表情は複雑だった。「先発を1年やってみてローテーションを守るのは厳しいのが分かった」。マウンド上ではなく場外戦で浴びた“痛打”は、来季への教訓になった。【高山通史】