<西武5-4ソフトバンク>◇28日◇西武ドーム

 この男には勝利の女神がついている。西武岸孝之投手(24)が、開幕4連勝を飾った。この日は、制球に苦しみ、6回7安打を浴びて4失点。だが、味方が6回裏に逆転して、チームは5-4で競り勝った。岸は昨年7月から10連勝。今季も強運を持ち続け、チームの連敗を「2」で止めた。

 試合終了をホッとしたような顔で見届けた。ベンチ裏を引き揚げる岸に笑顔はなかった。「何もないです。野手のみなさんに助けられました。自分は何もしていない。なんとか修正しようとしたけど全然ダメでした」。反省の弁ばかりが口をついた。昨年から続く10連勝にも「喜べる感じではない?

 そうですね」と、表情をひきつらせた。

 開幕4連勝を狙って上がった西武ドームのマウンドで、岸はもがいているようだった。2回、移籍初打席のオーティズに2ランを打たれ先制されると、同点に追いついてもらった直後の3回にも失策と連打が重なり、ボークで勝ち越し点を許した。「5回以内で代えられないように、自分なりに工夫したけど、ボークもあって…」。投球を振り返るのも勝利投手のようには見えないほどだった。

 ブルペンから異変を感じていた。「体重が乗らなくて、力が指先に伝わらない感じでした」。力んではだめだと自分に言い聞かせながらマウンドに上がったが、自慢のカーブが決まらず、130キロ台中盤の速球はソフトバンク打線に狙い打たれた。それでも渡辺監督は「悪いなりに投げられるところに彼の成長を感じる。悪いなりの投球ができれば勝ち星は転がりこんでくる」と岸をほめた。

 気持ちにメリハリをつけてマウンドに上がった。前日の練習終了後に石井一から「春を感じよう」と誘われた。西武ドームから外へ踏み出し、周辺を散策した。新緑の若葉がきれいだった。石井一が持参したスピーカーから流れてきた槙原敬之の歌を聴きながらリラックスした時を過ごせた。悪いなりの投球ができたのは、そうしたオフの時の心のゆとりが効果をもたらしてくれたのかも知れない。

 9連戦の初戦での白星。岸にとっては不本意かもしれないが「みなさんに勝たせてもらったというのもおかしいぐらい」と自己評価した内容でも勝てたのはチームにとって大きい。昨季から通算10連勝で開幕4連勝。昨年の日本シリーズでMVPを獲得した男の肩には、勝利の女神がついている。【竹内智信】

 [2009年4月29日9時7分

 紙面から]ソーシャルブックマーク