<中日2-1横浜>◇16日◇ナゴヤドーム

 中日が71年以来となる2戦連続延長サヨナラ勝ちで借金を3に減らした。開幕から4番にすわるトニ・ブランコ内野手(28)が、延長10回無死二、三塁の場面で、横浜山口からサヨナラ右前打を放った。先発チェンの9回132球1失点の熱投に刺激され、チーム打撃に徹した一打。息詰まる接戦をものにした落合竜が、逆襲へのリズムを刻み始めた。

 真っ向勝負に血液をたぎらせながら、ブランコの頭は冷静だった。1-1の延長10回無死一、三塁。初球に一塁走者森野が二盗を決め、一塁が空いたが横浜山口は勝負を挑んできた。オール直球でカウント2-1。一発狙いを捨て、5球目の外角高めにバットを合わせた。「ジャストミートを心がけた」。鋭い打球が一、二塁間を抜けた。

 一塁に走りだした瞬間、サヨナラを確信した。そして一塁側ベンチを必死に指さした。チームの勝利。そう、言いたかった。チームメートがベンチから飛び出してきた。小田にユニホームの上着を脱がされそうになった。来日して一番の喜び。ブランコは「神に感謝したい」と繰り返した。2戦連続延長サヨナラ勝ちは、71年9月25日、27日のヤクルト戦(中日球場)以来38年ぶり。まさに神がかっていた。

 技ありの一打だった。ケタ外れのパワーばかりは目立つブランコだが、実は器用さが持ち味だ。大リーグ・ナショナルズに所属していた05年。主な役割は代打というより美容師だった。クラブハウスでチームメートの髪をバリカンで刈る係。巨体を折り曲げ毎日要求に応じた。ロビンソン監督の髪も2回手入れした。「打撃より髪を刈っていたような気がするよ」。この日の一打も152キロを器用にバットの芯でとらえた。もはや4番での起用に異論をはさむものはいない。

 落合監督はそれでもチームを戒めた。「いつまで高い授業料払えるか。本当はチェンに勝ち星がついて、岩瀬にセーブがつかなければいけないゲームだ。6回で終わっている試合。あそこでバットがでないか…」。指摘したのは1-1の6回無死二、三塁の場面。絶好のチャンスで売り出し中の野本、藤井が連続三振した。そして「1番給料の安いヤツが打った」と言い残した。

 推定年俸2700万円のブランコの一打で、苦しみながら星を拾った。常勝軍団復活にはまだ遠いが、確実に上昇気流をつかんだ。17日の横浜戦で3連勝を決め、勢いをつけて交流戦に突入する。【村野

 森】

 [2009年5月17日11時42分

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