<ソフトバンク1-1阪神>◇19日◇福岡ヤフードーム

 阪神久保康友投手(28)に笑顔はなかった。少しうつむいて「(チームの)借金が減っていないんでね。出来どうこうよりも勝たないと意味がない」と言った。8回2安打1失点。ほぼ満点の内容も初白星だけがついてこなかった。

 こん身の111球だった。ロッテ時代は2勝7敗、防御率6・50と苦手にしたソフトバンク、しかも相手はこの日まで阪神戦5勝1敗の「虎キラー」杉内。ぎりぎりの投手戦で低めに集めて内角をついた。しかし6回1死二塁から本多に三盗を許した。直後の連続四球で満塁となり、小久保の犠飛で1点を失った。「スキをつかれて三盗を許してしまった。警戒をしていたけど、まさか走ってくるとは…」。だが最少得点差は死守した。あきらめない投球が9回の同点劇につながった。林の一発をベンチで見て久保は少し笑った

 慣れ親しんだパ・リーグDH制で能力を発揮した。阪神移籍直後は「バットは注文したけど、特別なこだわりはない。バットの細かい違いなんてわかりませんよ。それがわかるなら打撃は得意でしょ」と苦笑いしていた。だが交流戦開幕投手を任されたこの日はソフトバンクの本拠地。マウンドに集中できて打順の兼ね合いによる交代もない。久保投手コーチは「久保はパ・リーグの感覚で、全部を投げるつもりでやっている。だから交流戦の方がいいと思う」と分析していた。

 真弓監督は、久保について「いい投球をして勝ち星がつかない。次はなんとかと、野手も意識しているんだけど。勝たせてやりたい」と言った。過去6度の先発は勝ち運に恵まれなかった。7度目の正直も移籍後初勝利はおあずけになった。0勝2敗の数字も変わらない。ただ力投が呼んだ9回の同点劇で、黒星は消えた。次は念願の初白星を奪うだけだ

 [2009年5月20日10時46分

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