<ソフトバンク9-5中日>◇30日◇福岡ヤフードーム

 プロ16年目のソフトバンク佐藤誠投手(33)が、絶体絶命の危機をわずか2球でしのいで今季初勝利を挙げた。先発大隣が崩れ、投手陣最年長の「満塁男」水田も同点を許し、なおも1死満塁。マウンドを託されたベテラン右腕は大きく息をつき、自分に言い聞かせた。「1点は仕方ない」。中日和田に対し、開き直って投じた2球目は外角低めのカーブ。打球は力なくショート川崎へと転がり、併殺に打ち取った。

 続く6回も無安打無失点に抑え、昨年9月3日以来の通算16勝目が転がり込んだ。「チームにも僕にもかなり弾みがつく勝ちと流れをいただいた感じ」。お立ち台で遠慮がちにはにかんだ。殊勲の右手にはウイニングボールを手渡されたが「中継ぎなんで、1勝で喜んでいたら足元をすくわれる」と、1度は受け取りを“拒否”。「キャッチボールに使います」と渋々?

 ポケットにねじ込んだ。

 昨季は3勝2敗ながら防御率5・19と内容がともなわず、12月の契約更改では「契約してもらっただけでもありがたい」と危機感を口にした。オフには疲労を軽減するために球界最軽量クラスの460グラムのグラブを試したほか、打者の手元で沈む新球ツーシームを習得するなど、プロ16年目でも向上心を失わず、背水のシーズンに備えた。開幕直前にはオープン戦防御率0・00ながら2軍落ちする苦難もあったが、くさることなく出番を待っていた。

 佐藤が見せた熱投を受け「勝利の方程式」の3人も無安打リレーでつないだ。ルーキー摂津が2四球を出しながらも踏ん張れば、2試合連続で失点していたファルケンボーグは3者凡退の快投。最後は守護神馬原が森野を空振り三振に仕留めてフィニッシュだ。高山投手コーチは「佐藤が流れを止めてくれた。今日の勝ちは大きい」とベテラン右腕をたたえた。佐藤は「与えられた場所で抑える。それだけです」と緩めていたほおを引き締めた。いぶし銀の33歳もまた、快進撃に欠かせない1人だ。

 [2009年5月31日11時39分

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