<横浜4-3ロッテ>◇8日◇横浜

 「マムシ」の生命力だった。3点を追う5回裏1死満塁。30歳の横浜北川隼行内野手が20歳の大嶺の直球にかぶりつく。やや内寄りに入ってきた球をフルスイングすると、鋭い打球が右中間へ舞い上がった。そのままスタンドへ突き刺さる逆転満塁弾となった。7連敗のトンネルからチームを救ったのは、プロ7年目の初アーチだった。

 お立ち台も初めてだ。「ありがとーございましたあ。サイコーでーす」。はち切れんばかりの笑顔だ。初回にバントを失敗し「あそこで打たなかったら、もうあれ(2軍)だなと。自分の野球人生を懸けていきました」と振り返る。田代監督代行も「最初、バントをミスりやがって。あいつね、ミスした後に取り返す根性を持ってる。みんなに『マムシ』って言われてる」と目を細めた。

 7年目の30歳なら、自分の立場は十分承知だ。今季、利之から隼行に登録名を変更。「ぶっちゃけ最後ぐらい、今の流れを変えられるように。嫁さんと本で調べて『これがいいんじゃない?』って。嫁さんの提案です」という。仁志に代わって先発出場したが、いつ2軍降格を命じられるか分からない。さらに大事な場面で失敗している。「マムシ」の意地だった。

 連敗を7で止めた田代監督代行は「ホント、苦しんだ中での苦しんだ勝利。これをきっかけにします。今日はみんな(報道陣)明るいね」と笑った。【今井貴久】

 [2009年6月9日8時2分

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