<横浜13-7広島>◇4日◇横浜スタジアム

 石井の記念弾が空砲に終わった。プロ21年目のベテラン、広島石井琢朗内野手(38)が、4日の横浜戦(横浜)で通算100号本塁打を達成した。5回、右翼席へ移籍後初となる今季1号ソロを放った。通算2202試合目での達成は史上最も遅い記録。マクレーンにも2打席連続アーチが出るなど7点を奪ったが、前田健、林の投手陣が乱調で計13失点。石井のメモリアル弾を勝利で飾れなかった。

 その放物線を、石井は忘れることはないだろう。古巣横浜相手に5回、三浦のスライダーをジャストミート。移籍後初、今季1号で通算100号のメモリアル弾は、かつて自分を応援してくれた横浜ファンで埋まったライトスタンドへ飛び込んだ。

 通算出場2202試合目での100号本塁打到達は、史上最も遅い記録(従来は1773試合=毒島章一)。石井は「3ケタ(100号)という大台は、自分としてはすごい記録です。プロに入ったときには、想像もしていなかった数字ですよ。打てないまま終わる人もいるわけだし」と振り返った。

 プロ第1号も、横浜スタジアムで、広島のエース北別府から打った。そして通算9530打席目で放った100号は、広島のユニホームを着て、横浜のエース三浦から。「この球場で、昔の仲間やファンの前で打てた。1号も100号もそのときのエースから打ったというのも、個人的には感慨深いですね」。

 投手としてプロ入りし、3年目のオフに野手に転向。そこから1歩づつ数字を積み上げてきた。06年には通算2000本安打を達成。98年には日本一も経験した。昨オフ、20年在籍した横浜から戦力外通告を受け、広島へ移籍した。

 古巣への複雑な思いはあるはずだが、口にはしない。むしろ赤色の服などを積極的に取り入れ、身も心もカープの一員になろうと努力してきた。グラウンドには誰よりも早く現れ、入念なストレッチを繰り返し、出番に備える。小窪ら若手にも、守備などについて技術、知識を教えることもある。

 自らの一打で5-0とし、勝利を大きくたぐり寄せたはずだった。だが、まさかの13失点で逆転負け。プロ1号を放った広島戦も、実は2-13で大敗している。敗れてもまた立ち上がる。石井は「残念ですが、気持ちを切り替えて明日からまた頑張ります」と前を向いた。通算100号は、ゴールではないのだ。【高垣

 誠】

 [2009年7月5日11時31分

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