<中日2-4巨人>◇27日◇ナゴヤドーム

 首位の巨人は2位中日との首位攻防戦に3連勝し、優勝へのマジックナンバー26が初めて点灯した。3回、小笠原道大内野手(35)が先制26号2ランを放って、史上36人目となる通算1000打点をマーク。先発久保裕也投手(29)は7回途中2失点の好投で今季初勝利を挙げた。セ・リーグでは巨人V9達成の73年以来となる3連覇へ、いよいよ原巨人がラストスパート。現日程での最短Vは9月12日となった。一方、中日は自力優勝の可能性が消えた。

 試合が終わると、原監督は軽やかな足取りでベンチを飛び出した。天下分け目の名古屋決戦。この3連戦で、それぞれの好プレーを思い浮かべながら、選手1人1人と笑顔でハイタッチした。「この上ない3連戦になりましたね」。25日の初戦に逆転勝ちした勢いに乗って、残る2試合は横綱相撲で完勝。ライバルに3連勝し、ゲーム差を5・5へと広げた。

 打つべき人が打った。3回、3番小笠原が見逃せばボール球かもしれない外角低めのフォークボールをとらえ、右越えに先制2ランを運んだ。1点差に詰め寄られた5回には、4番ラミレスが左越えに2点適時二塁打を放って突き放した。小笠原は左足の痛みをこらえて意地を見せ、ラミレスはこの3連戦で11安打の大爆発。原監督は「小笠原は、まさにガッツにしか打てない難しいボールを見事に打った。ラミレスは本当にいい状態で、この3連戦を戦ってくれた」と、球界最強コンビに目を細めた。

 ついに優勝マジック26が点灯した。長嶋、王のONを擁したV9時代以来となるリーグ3連覇へ、カウントダウンが始まった。しかし、マジックの話題になると、原監督からは笑顔が消え、「明日からも続きますし、逆に気を引き締めていかないといけない」と険しい表情に戻った。

 マジックに無関心なのは、謙遜(けんそん)しているからではない。24日、中日戦のため名古屋へ乗り込む前、原監督は甲子園決勝をテレビ観戦。最終回に日本文理(新潟)が9回2死から5点を奪った攻撃に目を奪われた。「野球って面白いよね。『野球とは?』と聞かれたら、いろんな形容詞がこれでもか、というほど出てくる。語り尽くせないほど」。奇跡の猛攻に感銘を受けると同時に、あらためて野球の奥深さに思いを巡らせた。

 何が起こるか分からない野球というスポーツで、星勘定や皮算用など意味はない。「数字的なものよりも、1戦1戦、ということの方がはるかに大事なこと」。マジックに一喜一憂しない原監督の考えは、しっかりと選手にも伝わっている。主将の阿部は「久保の力投は計算外?

 全然。こういうことが起こっちゃうのが野球なんですよ」と言った。これから、どんなドラマが待っているかは誰にも予測できない。マジックがゼロになる瞬間まで、決して手綱は緩めない。【広瀬雷太】

 [2009年8月28日8時16分

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