<横浜4-8中日>◇6日◇ハードオフ新潟

 中日和田一浩外野手(37)が、執念の「走攻守」でチームの連敗を4で止めた。6回の左翼守備で、横浜石川の左中間への飛球を追い中堅藤井と交錯。藤井が負傷退場するほどの激しいプレーだったが、和田が捕球して追加点を許さなかった。7回1死満塁の打席では二塁へのボテボテの当たりに全力疾走し、併殺を崩して同点の走者を迎え入れた。9回には中前適時打でダメ押し。首位巨人の優勝マジックは16に減ったが、竜は最後まであきらめない。

 詰まった。ボテボテの打球が二塁へ転がった。思わず下を向いた和田は、歯を食いしばって一塁に走りだした。1点を追う7回1死満塁。4-6-3と渡るボールの転送よりわずかに早く、一塁ベースを駆け抜けた。セーフ。三塁走者が同点のホームを踏んだのが分かった。「やるべきことをやっていくしかない」。負けていれば今季ワーストの5連敗。執念の全力疾走で、連敗ストップへの道筋を切り開いた。

 ひざに痛みが残っていた。1点ビハインドの6回2死二塁の左翼守備で、中堅藤井と激しく交錯した。石川の左中間への飛球。落ちれば1点は確実だった。全速力で落下点に走った。藤井に覆いかぶさるような形で激突した。2人ともその場に倒れ込み、昏倒(こんとう)。それでも和田は捕球していた。「ぶつかってでも捕らないといけない場面。ぼくのひざが(藤井の)わき腹に入ったかもしれない。心配です」。捨て身のプレーだった。

 和田の欲求不満はこれ以上ないほど膨らんでいた。人に怒りを向けないが、自分に厳しいタイプ。「本当は1日安打が出ないだけでイライラするんです」と話したことがある。この試合まで0勝4敗の9月は、まさに最悪。この試合を加えて打率2割6分3厘。打っても勝ち星につながらず、首位巨人とのゲーム差は7・5まで開いた。黙ってV逸を受け入れるわけにはいかなかった。

 ダメ押し打も和田だった。9回、6-4と突き放し、なお無死一、二塁の場面。横浜3番手木塚から中前タイムリーを放ち、7点目をもぎ取った。次戦につなげるため、最後まで攻撃の手は緩めなかった。

 連敗を止めた落合監督は、何を聞かれても無言を貫いた。試合前には今季初めて打撃ケージに入り、西打撃投手の投じるスローボールを軽いスイングで22球打ち返した。チームへの無言の咤(しった)だったのか。リラックスしろというメッセージだったのか。和田が燃え、打線は6試合ぶり2ケタ安打となる13安打と奮起した。巨人の優勝マジックがどれだけ減ろうと、竜はあきらめずに戦い続ける。【村野

 森】

 [2009年9月7日10時45分

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