<ソフトバンク5-1西武>◇6日◇福岡ヤフードーム

 見えた逆転優勝、見えた最多勝!

 ソフトバンク杉内俊哉投手(28)が西武打線を8回3安打1失点に抑え、自身5連勝を飾った。これで日本ハム・ダルビッシュと並んでハーラートップの14勝目。球威を増した直球を軸に、自己タイとなる3戦連続2ケタの11奪三振を記録した。チームもパ・リーグ相手に今季初の5連勝となり、貯金は今季最多タイの16。首位日本ハムがサヨナラ負けし、ゲーム差は3・5に迫った。

 いつも通り杉内は2度“登板”した。マウンドとお立ち台。観衆は左腕の投球とその肉声に2度も酔った。ダルビッシュに追いつくリーグ最多タイの14勝目。「(出場登録抹消で)ダルビッシュが休んでいるんで、コソーッと狙ってます。あと4試合投げる予定なので残り全部勝てるようにします」。ちゃめっ気を含んだコメントでファンの心を再びつかみ、沢村賞に輝いた05年以来の最多勝を狙うことを宣言した。

 5回に2安打で1失点した以外、二塁を踏ませたのは1度だけ。「スピードが心なしか少し上がっている気がする」。夏場にきて威力アップを実感する直球は8回でも142キロを計測。「投げる瞬間の力感がある。以前は7~8回に割と出ていたのが、今は序盤から出ています」。

 「いろいろ試しながら」の3回までに暖機運転を終えると、4回以降の5イニングで11奪三振のうち10個。要注意人物に挙げた中島には高め直球で空振り、内角直球で見逃しと、2三振を奪った。「チェンジアップが効いてるから、それを意識した見逃しや空振りが多かったですね」。直球と、同じ腕の振りから沈むチェンジアップはコインの表裏の関係。打者を混乱させ、4回からのカーブ解禁でさらにほんろうさせた。女房役の田上との息もぴったり合った。

 総奪三振は164個となり、リーグ最多169個の西武涌井に接近。その涌井が「最後は杉内さんに抜かれそう。調子を上げている」と驚くのも無理はない。両リーグ最高の奪三振率9・30と驚異的なペースだ。昨年のリーグ奪三振王が底力を見せている。

 そんな杉内は「交換王」でもある。直球が生命線。指先の最後の正確なひと押しが、きれいな回転を生み、打者の手元で伸びる。そのため球審に小まめに新しいボールへの交換を求める。「打たれて少しでも形が変わると、きれいな真っすぐがいかないから」。この日はファウルによる交換を含めて49個のボールを使った。球数118だから平均すれば同じ球で3球も投げない。球界屈指、お手本のような直球を支える美学である。

 これでチームはパ相手に今季初の5連勝(交流戦で6連勝を記録)。秋山監督は「さすがのピッチング。大きいよ。調子が良いね」と絶賛した。「疲れました」と完投を辞退した杉内だが、「14勝かあ。すげえ、どうしたんだろ」。本人が驚く好調ぶり。試合後「日本ハムがサヨナラ負け、首位と3・5ゲーム差」の朗報が飛び込んできた。逆転首位、そして最多勝の文字がはっきり見えてきた。

 [2009年9月7日11時13分

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