<広島5-2中日>◇16日◇マツダスタジアム

 首位打者あきらめん!

 中日井端弘和内野手(34)が約2カ月ぶりの3安打猛打賞を記録した。第2打席から3打席連続安打を放ち、打率を3割1分5厘に上げた。初の打撃タイトル奪取に欠かせない固め打ちがようやく出て、トップの巨人ラミレスとは1分差の3位に浮上。勝てばクライマックスシリーズ進出が決定していたチームは追撃及ばず敗れたが、井端の好調が何よりの好材料だ。

 初の打撃タイトルへ執念のヒットだった。8回の第4打席、井端は広島林のスライダーをはじき返した。打球が投手のグラブを強襲し、転々とする間に一塁を駆け抜けた。第2打席、第3打席の右前打に続いて猛打賞。7月2日阪神戦(ナゴヤドーム)以来、76日ぶりに出た「3本目」だった。

 「チームのためになると思って、ヒットでも四球でも塁に出ようと思っている。1番打者としてそれを1年間やってきた」。勝てば3年連続のCS進出が決まる試合は9回の反撃も及ばずに敗れた。それでも井端は9試合連続ヒットとなる3安打で打率は3割1分5厘に上昇。リーグ5位から3位に浮上した。

 「全部取る」-。打率を争う巨人ラミレス、横浜内川らが浮上してきた8月、こう宣言した。首位打者はもちろん、安打数(160=2位)、出塁率(3割9分4厘=1位)も含めた3冠宣言だ。あえて意識することで重圧を発奮材料に変える。その姿勢は3冠王を取ると宣言し続け、通算5度の首位打者に輝いた落合監督と重なる。

 落合監督は首位打者獲得にはいくつかの決め事があるという。その1つが「固め打ち」。日々、変動する打率という数字に向き合い、ライバルに勝つための数字を割り出す。そしてヒットが出たゲームでは一気に3安打、4安打を稼いで貯金をつくり、ライバルに精神的ダメージを与える。ここ2カ月の井端は23度のマルチ安打を記録しながら、あと1本が出なかった。だからこそ、この日の3本の意味は大きかった。

 タイトル争いが激化すれば、重圧は想像を絶する。3冠王の落合監督でさえ、シーズン最終戦まで続いた小数点以下の争いに円形脱毛症が2つもできた。井端も真っ向から向き合う覚悟はできている。「意識して取りに行くよ」。重圧を乗り越え、初の打撃タイトルをつかんだ時、竜の職人がさらにスケールアップするはずだ。【鈴木忠平】

 [2009年9月17日11時21分

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